インフルエンサーマーケティングを検討する際、多くの企業がまずフォロワー数の多さで候補を絞り込む。ところが、クリエイター向けプラットフォームCreatorIQが2026年に実施した大規模調査で、ブランド側が「重視している」と答える基準と、実際にクリエイターへ支払われている報酬の決まり方のあいだに、はっきりとしたずれがあることが明らかになった。
調査の概要
この調査はCreatorIQとInfluencers.clubが2026年5月29日から6月29日にかけて実施したもので、5,095人のクリエイターから回答を得た、同社としては過去最大規模の調査となった。誤差の範囲は±1.4ポイントとされている。
「重視する基準」と「実際の報酬」が一致していない
ブランドがクリエイターと組む際に重視する基準を尋ねたところ、1位は「適合度(スーツアビリティ)」で、2位はコンテンツの実績、フォロワー数は8番目と最下位に近い順位だった。ここだけを見ると、フォロワー数はもはや評価基準として重要ではなくなったように思える。
ところが、実際の報酬データを見ると話は逆になる。フォロワー数は、Instagram・YouTube・TikTokのいずれにおいても、クリエイターの収入をもっとも強く説明する指標だった。つまり、ブランドは「フォロワー数より適合度を重視している」と答えているにもかかわらず、実際にお金を払う段階になると、結局フォロワー数の多いクリエイターに多く支払っているという矛盾が起きている。CreatorIQはこの調査結果を「信頼性のギャップ」と呼んでいる。
フォロワーが多いクリエイターほど板挟みになっている
調査ではもう1つ興味深い実態も明らかになった。フォロワー数50万人以上のクリエイターの53%が、視聴者が求めるものとブランドが要求するものの板挟みになっていると回答している。フォロワーの多いクリエイターほど、ブランドからのタイアップ案件と、自分のファンが期待する発信内容とのあいだで摩擦を感じやすいということだ。
また、収入の分布にも大きな偏りが見られる。クリエイター全体の67%が、コンテンツ制作からの年収が1万ドル未満にとどまる一方、10万ドルを超えるのはわずか4%だった。フォロワー数100万人を超えるクリエイターの多くは年収5万〜25万ドル以上を得ているとされ、規模による収入格差が大きいことも分かる。
中小企業がインフルエンサーを選ぶときの実務的な示唆
この調査結果は、中小企業のインフルエンサー活用にも直接関係する。予算が限られている以上、フォロワー数だけで判断基準を作ると、割高な起用になりがちだ。一方で、「適合度が大事」という建前だけを鵜呑みにして、実績データを確認せずに小規模なクリエイターを選ぶのも危険だ。実際の報酬相場がフォロワー数に強く連動している以上、フォロワー数の少ないクリエイターほど、提示する報酬とその効果を慎重に見極める必要がある。
もう1つの示唆は、起用するクリエイターの状況を理解したうえで発注内容を決めることだ。とくにフォロワー数の多いクリエイターは、ファンの期待とブランドの要望の板挟みになりやすいと分かっている。ブランド側の要望を一方的に押し付けるのではなく、クリエイター自身の発信スタイルとどう両立できるかをすり合わせておくことが、結果的に自然な訴求につながりやすい。
まとめ
「フォロワー数よりブランド適合度が重要」という言説は、ブランド担当者に尋ねたアンケート結果としては正しい。しかし、実際の報酬データを見る限り、フォロワー数はいまだにクリエイターの収入をもっとも強く左右する要因であり続けている。建前と実態のこのギャップを理解したうえで、自社の予算と目的に合わせて、フォロワー数と適合度の両方を実務的に評価する姿勢が求められる。
