昔から、世界中の人々が「未来はどうなるんだろう?」「自分ってどんな人間なんだろう?」と考えてきました。占いは、そんな未来への不安や、自分を知りたいという気持ちにこたえる形で、ずっと昔から私たちのそばにありました。
星占いにタロット…なぜ私たちは「見えない力」にこれほど惹きつけられるのか?
「占い」と一言でいっても、実は色々な種類があります。大きく分けると、次の3つのタイプに分けられます。
- 誕生日などで占うタイプ(命術 – めいじゅつ)
これは、生まれた日や時間など、変えることのできない情報から、その人の性格や運命を占う方法です。西洋の星占いや、四柱推命(しちゅうすいめい)などがこの仲間で、「あなたはこんな性格で、こんな才能があるよ」ということを教えてくれます。 - 見た目で占うタイプ(相術 – そうじゅつ)
手のひらの線(手相)や顔つき(人相)、家の間取り(風水)など、目に見える形から占う方法です。その人の今の状態が形に表れていると考えられていて、性格や運勢を見ることができます。 - 偶然で占うタイプ(卜術 – ぼくじゅつ)
タロットカードを引いたり、コインを投げたりして、その瞬間の「偶然」の結果から占う方法です。易(えき)占いなどが有名で、「今、この問題についてどうすべきか?」といった、具体的なアドバイスをもらうのに向いています。
また、占い師さんがどうやって占うかによっても、「理論を大切にするタイプ」と「ひらめきを大切にするタイプ」に分かれます。理論タイプは、星の動きのルールやカードの意味など、決まったやり方に従って占います。ひらめきタイプは、占い師さん自身の直感や、特別な力で占う、とされるものです。
この違いは結構大事で、「理論タイプ」は一応ルールがあるので、そのルールが本当に正しいのかを調べることができます。でも「ひらめきタイプ」は、占い師さん個人の感覚なので、他の人が同じように試してみることがとても難しいのです。
「それって科学的じゃないよね」の本当の意味、知っていますか?
占いが本当に当たるのかを考える前に、「科学的」ってどういうことかを知っておく必要があります。科学が何かを調べるときには、大事なルールがいくつかあります。
- 「試せる」こと(検証可能性)
「こうじゃないか?」という考え(仮説)が、本当にそうなのかを実験や観察で試せることが大切です。 - 「何度やっても同じ結果になる」こと(再現性)
同じやり方で実験したら、誰がいつやっても同じような結果になる、ということです。「私がお祈りしたら一回だけ奇跡が起きた」というのは、再現性がないので科学では扱えません。 - 「もし間違っていたら、証明できる」こと(反証可能性)
これが一番大事かもしれません。「その考えがもし間違っているなら、こんな実験をすれば間違いだと証明できるはずだ」と言えるのが科学です。「絶対に姿を見せない透明な妖精がいる」という話は、いないことを証明できないので、科学では扱えないのです。
占いの「近いうちに良いことがありますよ」といった言葉は、とてもあいまいですよね。どんな出来事でも「良いこと」だと解釈できてしまうので、「占いが外れた!」と証明するのがとても難しいのです。これが、科学的に占いを調べるのが難しい理由の一つです。
科学者が本気で占いを検証した結果…判明した「当たる」の意外なカラクリ
科学者たちが占いを調べようとすると、いくつかの大きな壁にぶつかります。
- 「当たった」「外れた」の基準があいまい
「良いことがある」と言われて、100円拾ったら「当たり」? それとも宝くじに当たらないと「外れ」? 人によって感じ方が違うので、客観的に点数をつけられません。 - 信じる気持ちの効果(プラシーボ効果)
占いを信じていると、良いことがあると信じ込むことで、本当に良いことが起きたように感じたり、無意識にそういう行動をとったりすることがあります。これが占いの本当の効果なのか、信じていることによる効果なのか、見分けるのがとても難しいのです。 - 偶然の一致
たくさんの人が占いをすれば、中には偶然、言われた通りになる人も出てきます。特に、誰にでも当てはまりそうな、あいまいな内容ならなおさらです。
昔、心理学者が星占いについてたくさんの研究を調べましたが、残念ながら、星占いが本当に性格などを当てられるという証拠はほとんど見つかりませんでした。ある研究で、一時的に「星座と性格に関係があるかも?」という結果が出ましたが、よくよく調べてみると、それは被験者の人たちがもともと星占いの知識を持っていて、それに合わせて答えていただけだった、ということが分かりました。
また、「書いた文字から性格がわかる」とされる筆跡診断も、心理テストの結果と比べてみたところ、ほとんど関係がないという結果が出ています。「この文字を書く人はこういう性格だ」という科学的なつながりは、今のところ見つかっていません。
こうした理由から、科学の世界では、占いは「科学のように見えるけど、実は科学的な根拠がないもの(疑似科学)」として扱われることがほとんどです。
これが「占い、当たる!」と感じる正体。あなたの心を操る5つの心理トリック
占いに科学的な根拠がなくても、多くの人が占いを魅力的だと感じ、信じています。その背景には、私たちの心のはたらきが関係しています。
- 誰にでも当てはまることを「自分のことだ!」と思ってしまう(バーナム効果)
「あなたには、まだ使っていない才能が眠っていますね」と言われると、ドキッとしませんか? でも、これってほとんどの人に当てはまることです。このように、誰にでも当てはまるような、あいまいな性格の説明を、まるで自分のことだけを言い当てられたように感じてしまう心理を「バーナム効果」と呼びます。 - 自分に都合の良いことだけを覚えてしまう(確証バイアス)
占いが「当たった!」と思ったことは強く覚えていて、「外れた…」と思ったことはすぐに忘れてしまったり、「まあ、こういう意味だったのかも」と自分に都合よく解釈したりする傾向のことです。 - 占いを信じて行動したら、本当にそうなってしまった(自己成就予言)
「もうすぐ素敵な出会いがありますよ」と言われて、いつもよりオシャレをしたり、積極的に人と話すようになったりしたら、本当に出会いが生まれるかもしれません。これは、予言が直接未来を当てたのではなく、予言を信じたことで自分の行動が変わり、結果的に予言通りの現実を引き寄せた、ということです。 - 安心したい、希望がほしいという気持ち
不安な時やストレスがたまっている時、私たちは安心感や「こうすれば大丈夫」という指針を求めて占いを信じやすくなります。また、「きっと良いことがある」という希望的観測も、占いを信じやすくさせます。 - みんなが信じているから、自分も信じてしまう(社会的影響)
周りの友達や有名な人が「あの占い、すごく当たるよ!」と言っていると、自分も信じてみようかな、という気持ちになりやすくなります。
これらの心の動きが合わさることで、「この占い、本当に当たる!」という強い感覚が生まれるのです。それは、占いが未来を予知したからではなく、私たちの心がそのように感じさせている、というわけです。
天気予報と占いの「決定的」な違い、説明できますか?
天気予報や経済の予測も未来を予測するものですが、占いとは根本的にやり方が違います。
科学的な予測は、たくさんの実際のデータ(過去の天気や経済の動きなど)をもとに、コンピューターなどを使って数学的な計算をします。そして、予測が外れたら「どうして外れたんだろう?」と原因を分析し、モデルをどんどん賢くしていきます。つまり、失敗から学んで成長していく仕組みがあるのです。
一方、占いは、古い言い伝えやシンボルの解釈に頼ることが多く、予測が外れてもその仕組み自体を見直す、ということがあまりありません。この「失敗から学んで自分を改善していく仕組みがあるかどうか」が、科学的な予測と占いの大きな違いです。
占いの正体を知り、もう振り回されない「賢い付き合い方」を手に入れる
ここまで見てきたように、占いが未来を正確に予測できるという、信じるに足る科学的な証拠は、残念ながら見つかっていません。占いが「当たる」と感じるのには、私たちの心の中にある、さまざまな面白い仕組みが関係しているようです。
だからといって、占いが全く無意味だというわけではありません。占いが、誰かにとって心を落ち着かせたり、希望を与えたり、自分を見つめ直すきっかけになったりすることはあるでしょう。それは文化的なもの、あるいは心理的な現象として、とても価値のあることかもしれません。
大切なのは、「これは科学的に根拠のある話なのかな?」と一度立ち止まって考えてみる力(批判的思考)を持つことです。そして、科学的に証明された事実と、伝統や個人の信じていることとを区別すること。特に、人生の大事な決断をするときには、この区別がとても重要になります。占いを楽しむのは個人の自由ですが、その言葉がどんな性質のものなのかを理解した上で、上手に付き合っていくのが賢い選択と言えるでしょう。
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