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日本の家庭向けセントラル浄水器(元栓直結型浄水器)に関する専門的分析

目次

はじめに

レポートの目的

本レポートは、日本の家庭における水質向上への関心の高まりに応え、包括的な解決策として注目されるセントラル浄水器(元栓直結型浄水器、オール浄水器とも呼ばれる)について、専門的な分析を提供することを目的とします。日本の水道水は一般的に高い品質を維持していますが、残留塩素の影響や配管の状態など、さらなる水質改善を求める消費者のニーズが存在します 1。特に、水質が健康や美容、ライフスタイル全般に与える影響への意識向上は、セントラル浄水器のような家全体の水を浄化するシステムへの関心を後押ししています 3

本分析では、セントラル浄水器の基本的な仕組みと機能、導入によるメリット(家全体の水質向上、肌や髪への影響、配管や家電製品への影響)、デメリットや注意点(初期費用、設置、メンテナンス、水圧への影響)、日本市場における製品の種類や主要メーカー、費用相場、設置工事の詳細、他の浄水方法との比較、そして利用者や専門家の評価といった多角的な情報を提供します。これにより、日本の一般家庭がセントラル浄水器導入を検討する際に、十分な情報に基づいた意思決定を行うための一助となることを目指します。分析は、公開されている情報源 2 に基づき、客観的かつ詳細に行われます。

第1章:セントラル浄水器(元栓直結型浄水器)の定義

1.1. セントラル浄水器とは何か?

セントラル浄水器とは、家庭の水道メーター直後(二次側)の元栓部分に設置される比較的大型の浄水システムを指します 1。市場では、「元栓直結型浄水器(もとせんちょっけつがたじょうすいき)」、「元付型浄水器(もとづけがたじょうすいき)」、「オール浄水器」、「家中浄水器」など、複数の名称で呼ばれることがありますが、基本的な概念は同じです 9

このシステムの最大の特徴は、家屋に引き込まれた水道水を、各蛇口や設備(キッチン、洗面所、風呂、シャワー、トイレ、洗濯機、給湯器など)に分岐する の段階で一括して浄水する点にあります 1。これにより、家中のどの蛇口をひねっても浄水された水を利用できる状態が実現します。特筆すべきは、給湯器の手前で浄水するため、お湯も浄水された状態で供給される点です。これは、キッチンでの利用はもちろん、特に入浴やシャワーにおける水質を重視するユーザーにとって大きな利点となります 10

1.2. 中心技術:水の浄化方法

セントラル浄水器の浄水プロセスは、水道メーターを通過した水が、本体内部に収められたフィルターカートリッジを通過することで行われます 9。フィルターに使用される主なろ材には、以下のようなものがあります。

  • 活性炭: 残留塩素やカルキ臭、カビ臭、一部の有機化合物を吸着除去する目的で広く用いられます。特にヤシ殻を原料とした「ヤシガラ粒状活性炭」は、多様な物質を吸着する能力が高いとされ 11、一方で「繊維状活性炭(ACF)」は吸着スピードが速いという特徴を持ちます 12。一部のモデルでは、これらの活性炭を組み合わせたハイブリッドフィルターを採用し、双方の利点を活かそうとしています 12
  • セラミックス: 活性炭と組み合わせて使用されることが多い素材です。メーカーによっては、トルマリン、遠赤外線放射セラミックス、麦飯石(ばくはんせき)、ゼオライトといった特定のセラミックスを採用し、水の「質」を高める、ミネラルを添加する、あるいは水をまろやかにするといった効果を謳っています 11
  • 不織布など: 活性炭フィルターの前処理として、水道水中の錆(さび)やゴミなどの比較的大きな粒子を除去するために、不織布などのフィルターが用いられる場合があります 27
  • その他の素材: システムによっては、フィルター内部での細菌繁殖を抑制する目的で、銀イオンなどを添加している場合もあります 11

フィルターの性能を示す指標の一つに「ミクロン定格」があります。これはフィルターが除去できる粒子の大きさを示し、例えば1ミクロン定格のフィルターは、1ミクロンより大きな粒子(残留塩素、トリハロメタン、雑菌、汚れ、赤錆など)を除去する能力を持つとされます 11。ただし、一般的に、除去性能を高めるためにフィルターの孔(あな)を細かくすると、水の流れに対する抵抗が大きくなり、瞬間的な流量(水の勢い)が低下する可能性があります 9

活性炭に加えて様々な種類のセラミックスを組み合わせる製品設計は、単に水道法で定められた基準項目(主に残留塩素)を除去するだけでなく、消費者が感じる「水の味」や「肌触り」といった、より感覚的な水質改善を目指していることを示唆しています 11。これらのセラミックスは、標準的な浄水性能を超えた付加価値を提供し、他社製品との差別化を図る要素として位置づけられていると考えられます。これは、測定可能な汚染物質の除去だけでなく、主観的な満足度も重視する消費者層に向けたアプローチと言えるでしょう。

1.3. 類似装置(例:活水器)との区別

セントラル浄水器と同様に、水道メーター付近の屋外に設置される装置として「活水器(かっすいき)」があります 10。設置場所が似ているため混同されやすいですが、その目的と機能は根本的に異なります。

最大の違いは「塩素を除去するか否か」です 10。セントラル浄水器は、フィルターを用いて水道水中の残留塩素やその他の不純物を物理的・化学的に 除去 することを主目的としています。一方、活水器は、一般的に残留塩素を除去 しません 10。活水器は、磁気やセラミックスなどを用いて水の構造や性質を変化させると主張することが多いですが、物質を除去するフィルターは持たないか、持っていても塩素除去を主目的としていません。そのため、活水器はフィルター交換が不要な「メンテナンスフリー」を謳うことが多いですが、これは物質を除去していないためです 10

この違いを理解することは非常に重要です。なぜなら、設置場所が似ているために、消費者が塩素除去を期待して活水器を導入したり、逆に活水効果を期待してセントラル浄水器を選んでしまう可能性があるからです 10。両者は全く異なる機能を持つ製品であり、期待する効果を得るためには、その違いを明確に認識した上で選択する必要があります。

1.4. 操作上の特徴

  • バイパスバルブ: 通常、セントラル浄水器の設置時には、浄水と原水(水道水そのまま)を切り替えられるバイパスバルブが組み込まれます 28。このバルブは、主にフィルター交換などのメンテナンス時に、家全体の断水を避けながら作業を行うために使用されます。また、理論上は、何らかの理由で塩素消毒された水道水を意図的に使用したい場合にも切り替えが可能ですが、日常的な使用で原水に切り替えることは稀です 28
  • 非電気式: 多くのセントラル浄水器は、浄水プロセスに電力を必要としない非電気式の装置です 10。そのため、電気代がかからず、設置場所に電源コンセントを確保する必要もありません。

第2章:家全体の水質浄化がもたらす利点

2.1. 家中どこでも一貫した水質

セントラル浄水器の最も基本的な利点は、導入により家中のすべての水栓から浄水された水が得られることです 2。キッチンでの飲用・調理用はもちろん、洗面所での洗顔や歯磨き、浴室での入浴やシャワー、トイレの洗浄機能、さらには洗濯に至るまで、生活で使用するあらゆる水が浄化の対象となります。

特に重要なのは、浄水プロセスが給湯器よりも前の段階で行われるため、供給されるお湯も浄水であるという点です 3。これにより、塩素などの刺激物質が除去されたお湯で入浴やシャワーを楽しむことが可能となり、後述する肌や髪へのメリットを最大限に享受できる環境が整います。

2.2. 健康、肌、髪への恩恵(塩素除去の影響を中心に)

セントラル浄水器導入の主な動機として、水道水中の残留塩素の除去が挙げられます 1。塩素は水道水の安全性を確保するために不可欠な消毒剤ですが、一方で肌や髪のタンパク質を酸化させる作用があり 3、特有の臭い(カルキ臭)の原因にもなります 2

  • 肌への効果: 塩素が除去された水やお湯を使用することで、肌への刺激感が軽減され、乾燥やかゆみ(「ピリピリ感」1)が和らぐといった報告が多く見られます。特に、敏感肌やアトピー性皮膚炎の傾向がある人、乳幼児のいる家庭では、この効果が重視される傾向にあります 3。塩素は肌の自然な保湿成分を奪い、タンパク質にダメージを与える可能性があるため 4、その除去は肌の健康維持に寄与すると考えられます。入浴やシャワーで全身に浄水を使用できることのメリットは特に大きいとされています 3。また、水温が高いお湯の場合、塩素の反応性が高まるという指摘もあり 4、浄水されたお湯を使うことの意義はさらに増します。
  • 髪への効果: 同様に、塩素は髪のキューティクルにダメージを与え、パサつきや傷みの原因となる可能性があります 4。セントラル浄水器によって塩素が除去された水で洗髪することで、髪のパサつきが抑えられ、手触りが柔らかくなったり、ツヤが出たりといった効果が期待されます 3。利用者からは、コンディショナーの使用量が減ったという声も聞かれます 6
  • 飲用水として: 塩素やそれに由来するカルキ臭が除去されるため、水道水の味や臭いが改善され、より美味しく飲めるようになります 2。フィルターの性能によっては、塩素だけでなく、トリハロメタンや水道管由来の赤錆、その他の微細な不純物も除去される可能性があります 1。一部の製品では、体に必要なミネラル分は除去せずに残すことを特徴として謳っています 11

複数の情報源で肌や髪への好影響が強調されている点 3、そして利用者の体験談でもこれらの効果が頻繁に言及されていること 4 を踏まえると、日本の消費者にとってセントラル浄水器の価値提案の中心は、飲用水の改善以上に、入浴やシャワーを通じたパーソナルケアの質の向上にある可能性が高いと考えられます。これは、日本の入浴文化やスキンケアへの関心の高さを反映しているとも言え、家全体でお湯を含めて浄水を使えるというセントラル浄水器ならではの特性が、このニーズに合致していることを示唆しています。

2.3. 配管や水回り家電への保護効果の可能性

  • 不純物の低減: セントラル浄水器は、水道水に含まれる可能性のある固形物、例えば古い配管からの赤錆や微細なゴミなどを、家全体の配管システムに入る に除去する効果が期待できます 1。これにより、特に新築住宅など、もともと配管がきれいな状態を維持しやすくなる可能性があります 15
  • 家電製品の保護: 不純物が少ない水は、給湯器、洗濯機、食器洗い乾燥機、温水洗浄便座といった水を使用する家電製品を、スケール(水垢)の付着や不純物による摩耗・腐食から保護し、寿命を延ばすのに役立つ可能性があります 2
  • 塩素除去後の細菌繁殖に関する懸念への対応: 塩素が除去された水が配管内を通ることについて、細菌が繁殖しやすくなるのではないかという懸念が生じる可能性があります。これに対し、メーカー側は、水道管内部は常に水圧がかかっており、外部から雑菌が侵入できない密閉状態にあるため、塩素がなくても衛生的な状態は保たれると説明しています 11。この主張は、塩素除去に伴う潜在的なリスクに対する安全性を確保するための重要な論点となります。

配管や家電の保護という利点は論理的には考えられますが、提供された情報の中では、肌や髪への効果ほど強くは強調されておらず、その効果の程度を具体的に示すデータも限定的です。特に新築住宅でのメリットが言及されている点 15 は、この利点が既存の配管問題を解決するというよりは、むしろ新しいきれいな状態を維持するための 予防的 な側面に重点があることを示唆しているかもしれません。また、塩素除去後の細菌繁殖のリスクに対する反論 17 は、消毒剤を除去することへの当然の疑問に対応するために不可欠な説明と言えます。

2.4. 生活上の利便性と水利用の質の向上

  • 手間の削減: キッチンなどで浄水器を使用する場合、蛇口で浄水と原水を切り替える操作が必要になることがありますが、セントラル浄水器ではその必要がありません 22。常に浄水が供給されるため、意識せずに質の高い水を利用できます。
  • 料理・調理: 炊飯、お茶やコーヒーの抽出、野菜洗い、煮込み料理など、料理全般に浄水を使用することで、素材本来の味や香りを引き出しやすくなると言われています 3。また、塩素による野菜のビタミン破壊を抑える効果も期待されています 22
  • 洗濯: 塩素を除去した水で洗濯することにより、衣類の色褪せや生地へのダメージを軽減できる可能性があります 3。洗濯物がより柔らかく仕上がると感じる場合もあります 20
  • その他の利用: ペットの飲み水や植物への水やりなど、生活の様々な場面で浄水のメリットを享受できます 20
  • 室内スペースの確保: 浄水器本体は屋外に設置されるため、キッチンのシンク周りやシンク下がすっきりし、スペースを有効活用できます 13。ウォーターサーバーのようなボトルの保管場所や、ペットボトルの水の買い置きも不要になります 13

第3章:導入におけるデメリットと検討事項の評価

3.1. 経済的投資:初期費用(本体価格と設置工事費)

セントラル浄水器導入における最大の障壁は、初期費用の高さです。これには、浄水器本体の価格と、専門業者による設置工事費用が含まれます 1

  • 高額な初期投資: 蛇口直結型などの部分的な浄水器が数千円から購入できるのに対し、セントラル浄水器の導入には、一般的に20万円から45万円、あるいはそれ以上の費用がかかるとされています 2。この価格差は、処理できる水の量、フィルターの規模、そしてシステム全体の複雑さを反映しています 31
  • 価格変動要因: 本体価格は、ブランド、搭載されているフィルター技術、処理能力、さらには販売経路(メーカー直販か、販売代理店経由かなど)によって変動します。代理店方式の場合、中間マージンや営業コストが価格に上乗せされる傾向があります 1
  • レンタルという選択肢: 高額な初期投資を避けたいユーザー向けに、月額料金制のレンタルやリースといった提供形態も存在します 1。月々の支払いは3,000円から4,000円程度が相場とされ 14、フィルター交換などのメンテナンス費用が含まれていることが多いです。ただし、長期的に見ると、購入するよりも総支払額が高くなる可能性があります。

3.2. 設置に関する物流:スペース、複雑性、専門業者の必要性

  • 専門業者による設置が必須: セントラル浄水器の設置は、DIYで行えるものではなく、資格を持つ水道工事業者やメーカー指定の専門技術者による工事が必要です 1。これは、水道の元栓に接続し、既存の給水管を切断・接続するという作業が伴うためです。この工事費用が初期コストの大きな部分を占めます。
  • 設置プロセス: 一般的な設置手順としては、まず水道メーター付近の給水管の位置を確認します。配管が地中に埋設されている場合は掘削作業が必要になることもあります 32。その後、一時的に水道を止め、給水管を切断し、浄水器本体とバイパスバルブを組み込み、配管を再接続します。漏水がないかを確認した後、水を流し、掘削した箇所を埋め戻して完了となります 1
  • 設置スペースの確保: 浄水器本体を設置するための物理的なスペースが必要です。通常は水道メーター周辺の屋外スペースが利用されます 10。近年はコンパクトな設計の製品も登場していますが 27、設置場所の状況(特にマンションのパイプシャフト内など 13)によっては設置が困難な場合もあります。設置方法には、地上設置、壁掛け、地中埋設といったタイプがあります 33
  • 撤去にも費用と工事が必要: 将来的に浄水器の使用をやめる場合も、専門業者による取り外し工事が必要となり、費用が発生します 31。フィルター交換をせずに放置すると水質悪化や目詰まりの原因となるため、使用しない場合は適切に撤去する必要があります 31

専門業者による設置が必須である点は、利用者が自分で取り付けられる多くのポイントオブユース(POU)型浄水器とは大きく異なります。これにより、設置日程の調整、業者選定、工事品質のばらつき、費用の不透明性といった、製品購入以外の複雑な要素が加わることになります 1

3.3. 長期的な維持管理:フィルター寿命、交換費用、プロセス

  • 定期的なフィルター交換の必要性: セントラル浄水器のフィルターは消耗品であり、その浄水性能を維持し、衛生的な状態を保つためには、定期的な交換が不可欠です 1。交換頻度は製品や使用水量によって異なりますが、一般的には1年から2年に1回程度が目安とされています 13。交換を怠ると、浄水能力の低下、目詰まりによる流量減少、さらにはフィルター内部で捕捉した物質が原因で水質が悪化する可能性も指摘されています 31
  • 専門業者によるメンテナンス: 蛇口直結型などのように利用者が自分で簡単にフィルター交換できるPOU型とは異なり、セントラル浄水器のフィルター交換は、多くの場合、設置業者やメーカーのサービススタッフによる訪問作業が必要となります 13。これには、事前の日程調整や作業時の在宅が必要となり、手間と感じられる可能性があります 14
  • 継続的な維持費用: フィルターカートリッジ自体の費用と、交換作業に伴う出張・技術料が、ランニングコストとして定期的に発生します 13。リットルあたりのコストは低く抑えられる可能性がありますが 33、1〜2年ごとに発生するまとまったメンテナンス費用は、家計にとって無視できない負担となり得ます。
  • 利用者の「うっかり忘れ」リスク: 日常的に意識することが少ない屋外設置の機器であるため、フィルター交換時期を忘れてしまったり、交換を先延ばしにしてしまうリスクがあります(「使っていることを忘れる」31)。これは、システムの性能を低下させ、導入のメリットを損なう可能性があります。

専門業者による定期メンテナンスというモデルは、利用者と提供事業者との間に長期的な関係性を生み出します。これは、利用者が自分で管理するPOU型とは対照的です。「忘れる」リスクが指摘されている点 31 は、頻度は低いものの重要なメンテナンスを確実に実施することの難しさを示唆しており、実際の運用においては、設計上の性能が常に維持されているとは限らない可能性を示しています。

3.4. 水流・水圧への影響

  • 潜在的な流量低下: 水がフィルターを通過する際には、必ずある程度の抵抗が生じます。そのため、原理的には、セントラル浄水器を設置することで、水の流量(勢い)や水圧が多少低下する可能性があります 9。特に、除去性能を高めるために目の細かい(ミクロン定格の小さい)フィルターを使用している場合、抵抗は大きくなる傾向があります 9
  • メーカー側の主張: 一方で、多くのメーカーは、製品設計において圧力損失を最小限に抑える工夫をしており、日常生活で体感できるほどの水圧低下はほとんどないと主張しています 10。具体的な圧力損失の数値を提示している場合もあります(例:0.02MPa 31)。
  • 目詰まりによる影響: ただし、フィルターが寿命を迎えたり、想定以上の不純物で目詰まりを起こしたりした場合には、顕著な流量低下や水圧低下が発生する可能性があります 31

物理的な原則(フィルターは抵抗を生む 9)と、メーカーのマーケティング上の主張(影響は最小限 10)との間には、若干の緊張関係が存在します。最新の技術で影響は最小化されている可能性が高いものの、元々の水圧が低い家庭や、水圧の変化に敏感な利用者は、わずかな違いを感じる可能性も否定できません。また、フィルターの経年劣化や目詰まりによって状況が悪化する可能性も考慮する必要があります。

3.5. 市場と購入に関する留意点

  • 限定的な販売チャネル: セントラル浄水器は、一般的な家電量販店やホームセンターなどでは、通常取り扱われていません 1。購入は、専門の販売代理店、設置工事を行う水道設備業者、またはメーカーの直販サイトなどを通じて行われるのが一般的です 1。このため、複数の製品を店頭で比較検討することが難しくなっています。
  • ニッチ市場という認識: 他の主要な住宅設備機器と比較すると、セントラル浄水器市場はまだ「メジャーではない」1 と認識されることがあります。これが、製品の選択肢の分かりにくさや、長期的なメーカーサポート、保守部品(フィルターなど)の供給に対する不安につながる可能性があります 1
  • 自己認証製品: セントラル浄水器の多くは、法的な義務付けではなく、メーカー自身の責任において性能や安全性を確認・表示する「自己認証製品」に分類されます 1。これは必ずしも製品の品質が低いことを意味しませんが、公的な第三者機関による認証が少ない可能性があるため、消費者はメーカーの信頼性や提示される性能データ(例:JIS S 3201に基づく試験結果 27)をより注意深く評価する必要があります。

専門的な販売経路、大手有名ブランドの不在、そして自己認証という状況は、消費者にとって製品選択のハードルを高くしています。一般的な家電製品のように、店頭での比較やブランドの知名度に頼ることが難しいため、個々のメーカーや販売・設置業者の信頼性を自身で調査・判断する必要性が高まります。これは、購入決定プロセスをより複雑にし、潜在的なリスクを感じさせる要因となり得ます。

第4章:日本市場におけるセントラル浄水器の動向

4.1. 提供されているシステムのタイプ概要

日本市場で利用可能なセントラル浄水器は、主に設置方法、本体の材質、採用されているフィルター技術によって特徴づけられます。

  • 設置方法 33:
  • 地上設置タイプ(地上タイプ): 最も標準的な設置方法。地中に埋設された給水管を一旦地上に取り出し、浄水器本体を接続した後、再び地中に戻すか、地上で配管を保護します。メンテナンスが比較的容易です。
  • 壁掛けタイプ(壁付けタイプ): 比較的軽量・小型の製品や、設置スペースの制約がある場合に採用されます。建物の外壁などに固定します。
  • 地中埋設タイプ(地中埋め込みタイプ): 浄水器本体を地中に埋設する方式。外観がすっきりするメリットがありますが、メンテナンス性が低下する可能性や、土壌との接触による電蝕(でんしょく)のリスクが指摘されることもあります。
  • 本体(ハウジング)の材質 33:
  • ステンレス鋼(SUS304など): 屋外設置という過酷な環境に耐えうる耐久性、耐食性、耐熱性が求められるため、多くのメーカーが本体材質としてステンレス鋼(特にSUS304)を採用しています 15。適切な手入れにより長期間の使用が可能です。
  • プラスチック製: 軽量化やコストダウンを目的として、一部の部品や小型の製品でプラスチックが使用される可能性もありますが、主要な構造部材としてはステンレスが主流のようです 33
  • フィルター技術: 前述の通り、活性炭(粒状、繊維状、またはその組み合わせ)を主軸とし、補助的に各種セラミックスなどを組み合わせたフィルターが一般的です 11

4.2. 日本市場で活動する主要メーカーおよびブランド

提供された情報に基づくと、日本市場でセントラル浄水器を提供している、または関連情報が見られるメーカーやブランドには、以下のようなものがあります。

  • ソリューヴ (Soluve) 1
  • アクアス5 (Aquas5) 10
  • SARASMAX 26
  • エクストラアクア (ExtraAqua) 12
  • アクアスタンド (AquaStand) 20
  • ピュアセントラル (PureCentral) (提供元:イーテック – Etec) 25
  • おみずのたび (Omizu no Tabi) (提供元:日本クリオ – Nihon Clio) 29
  • ネオパルフェ (NeoParfe) (提供元:ウォーターズ – Waters Inc.) 4
  • イトウェル (Itowell) (提供元:利水システム – Risui System) 5
  • アクウィズ (Acwith) (提供元:マーフィード – Marfied) 27
  • ヒカリオン (HikariOn) 2

また、パナソニックがコスト比較の対象として言及されていることから 14、同社もこの分野、あるいは関連する水処理製品市場に関与している可能性が示唆されますが、具体的なセントラル浄水器製品に関する情報は今回の資料には含まれていませんでした。

市場構造としては、特定の数社が圧倒的なシェアを持つというよりは、複数の専門メーカーがそれぞれ独自の技術や販売網で展開している状況がうかがえます 1

4.3. コスト構造:購入 vs レンタル、初期費用 vs 維持費用

セントラル浄水器の導入・利用にかかる費用は、主に「本体購入型」と「レンタル型」の2つのモデルに大別されます 14

  • 本体購入型: 利用者が浄水器本体を購入し、所有権を持ちます。初期費用(本体価格+設置工事費)が高額になる一方、長期間使用する場合、トータルのコストはレンタルよりも低くなる可能性があります。フィルター交換などのメンテナンスは、別途手配し費用を支払う必要があります 14
  • レンタル型: 初期費用が無料または低額に抑えられている場合が多く、導入のハードルが低いのが特徴です。月額料金(例:3,000円~4,000円程度 14)を支払うことで、本体の使用権と定期的なフィルター交換・メンテナンスサービスがセットになっているのが一般的です。ただし、利用期間が長くなるほど総支払額は増加します。契約解除時の撤去費用なども確認が必要です 31

コストの内訳を整理すると、以下のようになります。

  • 初期費用:
  • 浄水器本体価格(購入の場合)
  • 設置工事費用(購入・レンタル双方で発生する場合が多い。工事内容により変動。例:コンクリート斫り・埋め戻しは追加費用 2
  • 維持費用(ランニングコスト):
  • 交換用フィルターカートリッジ費用(購入型の場合)
  • メンテナンスサービス費用(購入型で業者に依頼する場合)
  • 月額レンタル料(レンタル型の場合、通常フィルター・メンテ費用込み)
  • 電気代(ほとんどの機種は非電気式のため、通常は無視できるレベル 10

表1:セントラル浄水器の費用概算比較(例)

ブランド/モデル例本体購入価格帯 (円, 推定)設置工事費 (円, 推定)フィルター交換頻度 (年)年間維持費 (円, 推定) ※1主な特徴/技術購入/レンタル
ソリューヴ (Soluve)30万円前後~ 115万円~10万円程度?1年 or 2年? 112万円~4万円程度?活性炭+セラミックス, 1ミクロン 11購入
アクアス5 (Aquas5)20万円~40万円 315万円~10万円程度?1年 312万円~3万円程度?活性炭 10購入/レンタル?
SARASMAX約29万円 265万円~10万円程度?不明 (要確認)不明 (要確認)ハイブリッド活性炭+セラミック 26購入
エクストラアクア (ExtraAqua)20万円~45万円 145万円~10万円程度?1年 or 2年? 12レンタル月3-4千円 14ダブル活性炭+セラミック 12購入/レンタル 14
アクウィズ (Acwith)不明 (要確認)5万円~10万円程度?約2年 (75万L) 27不明 (要確認)活性炭, JIS適合 27購入?
ヒカリオン (HikariOn)22万円 (工事費込) ※2 2上記に含む不明 (要確認)不明 (要確認)不明 (要確認)購入

注意: 上記は提供された情報からの推定値であり、実際の価格や費用はモデル、販売店、設置状況により大きく異なります。正確な情報は各メーカーや販売店に直接確認する必要があります。

※1: 購入型の場合のフィルター・サービス費用、またはレンタル型の年間料金の目安。

※2: 特殊工事(コンクリート斫り等)は別途費用 2。

この表は、利用者がセントラル浄水器の導入を検討する上で最も重要な要素の一つである費用について、初期投資と継続的な負担の両面から比較検討するための一助となります。購入とレンタルのどちらが自身の状況に適しているか、また、予算内でどのような選択肢があるかを把握する上で役立ちます。

第5章:設置工事プロセスの理解

5.1. 標準的な設置手順と場所

セントラル浄水器の設置場所は、原則として屋外の水道メーター直後(メーターから家屋側に入ってすぐの地点)です 1。ここで水道本管から分岐する前の給水管に接続することで、家全体の水を浄化対象とします。マンションの場合は、玄関横などに設置されているパイプシャフト(メーターボックス)内に設置されることもあります 13。庭の散水栓など、浄水の必要がない箇所がある場合は、その分岐の手前に設置することも可能です 12

標準的な設置工事の流れは、以下のようになります 1

  1. 現場確認と準備: 水道メーターと給水管の位置を確認します。
  2. 掘削(必要な場合): 給水管が地中に埋設されている場合は、接続作業のために周囲を掘り起こします 32
  3. 通水停止: 家全体の水道の元栓を閉めます。
  4. 配管切断: 給水管の適切な箇所を切断します。
  5. 浄水器接続: 切断した配管の間に、セントラル浄水器本体と、メンテナンス用のバイパスバルブ一式を接続します。
  6. 漏水確認: 配管接続後、元栓を少し開けて接続部からの水漏れがないか慎重に確認します。
  7. 通水再開と最終確認: 漏水がないことを確認したら、元栓を完全に開けて家全体の通水を確認します。
  8. 埋め戻し・整地: 掘削した場合は、土を埋め戻し、周辺を清掃・整地して作業完了です 32

5.2. スペースと環境に関する要件

  • 物理的スペース: 浄水器本体を設置するためのスペースが必要です。製品によって寸法は異なりますが、例えばアクウィズ(Acwith)は約18cm(直径)×33cm(高さ)と比較的コンパクトなモデルも存在します 27。本体設置スペースに加えて、配管接続や将来のフィルター交換作業を行うための作業スペースも考慮する必要があります。
  • 屋外環境への適合性: 本体は屋外設置を前提に設計されており、風雨や紫外線に耐える素材(多くはステンレス鋼 SUS304)が使用されています 15。見た目やさらなる保護のために、専用の保護カバーが用意されている場合もあります 33
  • 配管へのアクセス: 設置の可否は、水道メーター付近の給水管へのアクセス容易性に大きく左右されます。

5.3. 専門設置業者の役割

セントラル浄水器の設置は、水道の元栓に関わる配管工事を伴うため、必ず資格を持つ専門の水道工事業者や、メーカーが認定した技術者が行う必要があります 1

専門業者は、適切な配管接続、確実な漏水防止、バイパスシステムの正しい設置を行います。水道工事に関する知識と技術、そして専用の工具を用いて、安全かつ確実に設置作業を完了させることが求められます。設置工事の費用は、初期導入コストの重要な一部を構成します 2

第6章:比較評価:セントラル浄水器 vs. ポイントオブユース(POU)型浄水器

セントラル浄水器の導入を検討する際には、蛇口直結型、ポット型、アンダーシンク型といった、特定の場所(Point of Use = POU)で水を浄化する他のタイプの浄水器との比較が不可欠です。

6.1. 主要な比較項目

比較検討にあたっては、以下の要素が重要となります。

  • 浄化範囲(どこまで浄水されるか)
  • 浄水効果(除去性能、フィルター容量)
  • 初期費用
  • 設置の複雑さ・手間
  • メンテナンス(頻度、費用、手間)
  • お湯への対応
  • 利便性
  • 水圧への影響
  • 長期的なリットルあたりのコスト

6.2. 蛇口直結型、ポット型、アンダーシンク型との比較分析

  • 浄化範囲:
  • セントラル:家全体のすべての水(冷水・温水) 9
  • POU型(蛇口直結型、ポット型、アンダーシンク型):設置した特定の蛇口(主にキッチン)から出る水のみ 3。シャワーヘッド型はシャワーのみ。
  • 浄水効果:
  • セントラル:家全体で一貫した水質を提供。大型フィルターによる高い総ろ過水量を持つことが多い 12
  • POU型:製品によって性能は様々。フィルターが小さいため、総ろ過水量はセントラル型より少ない傾向。
  • 初期費用:
  • セントラル:非常に高額(数十万円) 13
  • POU型:低価格(数千円~数万円) 14
  • 設置:
  • セントラル:専門業者による複雑な工事が必須 13
  • POU型:ほとんどが利用者自身で簡単に設置可能(一部アンダーシンク型を除く)
  • メンテナンス:
  • セントラル:交換頻度は低い(1~2年ごと)が、専門業者による作業が必要で、費用も比較的高額 13
  • POU型:交換頻度は高い(数ヶ月ごと、例:3ヶ月 20)が、利用者自身で簡単に行え、カートリッジ費用も比較的安価。
  • お湯への対応:
  • セントラル:給湯器の手前で浄水するため、浄水されたお湯が利用可能。フィルターへのダメージなし 10
  • POU型:多くの場合(特に蛇口直結型)、フィルターがお湯で損傷するため、冷水専用。温水使用は不可または推奨されない 13。シャワーヘッド型は温水対応だがシャワー限定。
  • 利便性:
  • セントラル:メンテナンス時期以外は「設置したら忘れられる」利便性。どの蛇口からも常に浄水 13
  • POU型:浄水を使いたい時に意識する必要がある(蛇口切り替え、ポットから注ぐなど)。
  • 水圧への影響:
  • セントラル:メーカーは影響最小限と主張 10
  • POU型:蛇口直結型などでは、流量低下を感じやすい場合がある。
  • 長期的なリットルあたりコスト:
  • セントラル:初期費用は高いが、フィルター寿命が長く大容量なため、長期間使用した場合の浄水1リットルあたりのコストは、POU型の頻繁なカートリッジ交換やペットボトル水よりも低くなる可能性がある 13

根本的なトレードオフは、「家全体の水を(お湯も含めて)包括的かつ便利に浄化できるが、初期費用と設置・維持の手間が大きいセントラル浄水器」と、「特定の場所の水を、手軽かつ安価に浄化できるが、範囲が限定的で、お湯への対応が難しく、頻繁な利用者自身によるメンテナンスが必要なPOU型浄水器」との間に存在します。どちらを選択すべきかは、利用者の優先順位(浄化したい範囲、お湯の浄化の必要性、予算、手間への許容度など)によって全く異なります。特にお湯を浄化できるかどうか 13 は、入浴やシャワーでの快適性を重視する場合、セントラル浄水器を選択する上で決定的な要因となり得ます。

表2:浄水器タイプ別 比較マトリクス

比較項目セントラル浄水器蛇口直結型浄水器ポット型浄水器アンダーシンク型浄水器
浄化範囲家全体(冷水・温水)特定の蛇口(主に冷水)ポット内の水のみ特定の蛇口(主に冷水)
初期費用(目安)高額(20万円~)低価格(数千円~)低価格(数千円~)中~高価格(数万円~)
設置専門業者による工事必須利用者DIY(簡単)不要利用者DIY or 業者工事
メンテナンス頻度低頻度(1~2年ごと)高頻度(2~6ヶ月ごと)高頻度(2~3ヶ月ごと)中頻度(6ヶ月~1年ごと)
メンテナンス手間・費用業者依頼・比較的高額利用者自身・比較的安価利用者自身・比較的安価利用者自身・中程度
お湯への対応可能(フィルター損傷なし)不可または非推奨不可不可または非推奨
水圧への影響(一般的傾向)軽微(メーカー主張)流量低下を感じやすいなし軽微
長期コスト/L(推定)低い可能性中程度中~高い低~中程度

注意: 上記は一般的な傾向を示すものであり、個々の製品によって性能やコストは異なります。

この比較表は、利用者が自身のニーズや状況に照らし合わせて、どのタイプの浄水器が最適かを判断するための客観的な情報を提供します。

第7章:利用者体験と専門的視点の統合

7.1. 利用者の声・体験談に見られる共通テーマ

セントラル浄水器を実際に導入した利用者の声や体験談からは、いくつかの共通する肯定的な評価が見られます。

  • 肌や髪への実感: 最も多く報告される効果の一つが、肌の乾燥感やかゆみが軽減された、あるいは髪がしっとり、サラサラになったといった、肌や髪の状態改善に関する主観的な実感です 4
  • 味・臭いの改善: 水道水特有の塩素臭(カルキ臭)がなくなり、飲用時や料理に使用する際に、水が美味しく感じられるようになったという声も多く聞かれます 2
  • 入浴・シャワーの快適性向上: 塩素による刺激感がなくなることで、お風呂のお湯が柔らかく感じられ、入浴やシャワーがより快適になったという評価も一般的です 3
  • 利便性: 家中どこでも、意識せずに浄水を使える手軽さ、便利さを評価する声もあります 5

ただし、これらの効果、特に肌や髪に関するものは、個人の感覚や体質に依存する主観的な評価である点には留意が必要です 4

7.2. メーカーの主張と性能データ

メーカー側は、自社製品の優位性を示すために、特定の性能データを提示することがあります。

  • 性能指標: 例えば、JIS S 3201(家庭用浄水器試験方法)に基づいた遊離残留塩素の除去率(例:80%以上 27)や、フィルター交換の目安となる総ろ過水量(例:750,000リットル 27)などが示される場合があります。また、水圧低下が極めて小さいことを具体的な数値(例:圧力損失0.02MPa 31)でアピールすることもあります。
  • 技術的特徴: 採用しているフィルター技術(例:繊維状活性炭、特定のセラミックス、ミクロン定格)を強調し、他社製品との差別化を図ることも一般的です 11

7.3. 安全性と信頼性に関する考察

セントラル浄水器は、家庭の水道システムに直接接続されるため、安全性と信頼性は極めて重要な要素です。

  • 塩素除去後の細菌繁殖: メーカーは、設置後の配管内での細菌繁殖リスクについて、水道管内が水圧のかかった密閉状態であるため、外部からの汚染はなく、衛生面での問題は生じないとの見解を示しています 11。一部の製品では、衛生面をさらに強化するため、逆流防止弁やエア抜きシステムといった機構を備えている場合もあります 26
  • 使用部材の安全性: 一部のメーカーでは、安全性への配慮から、金属アレルギーの原因となりうる銀イオンや銅などの抗菌剤を使用しない 35、化学物質の溶出リスクが低いとされる非溶剤系の配管シール材を採用する 35、鉛の溶出リスクが低い鉛レス部品を使用する 35 といった取り組みをアピールしています。
  • 耐久性: 屋外での長期使用に耐えるよう、本体材質に耐久性の高いステンレス鋼(SUS304)などを採用していることが、信頼性の指標の一つとなります 15
  • 認証: 「自己認証製品」が多い市場であるため 1、消費者はメーカー自身の信頼性に加えて、JIS S 3201のような公的な試験規格に基づく性能データが提示されているかを確認することが、製品選択の一助となります 27

水道の元栓を改変し、消毒剤である塩素を除去するという製品の性質上、安全性(細菌繁殖、部材からの溶出)に関する懸念が生じるのは自然なことです 17。これに対し、メーカー側が積極的に安全対策やその根拠を説明していること 11 は、消費者の不安を払拭し、信頼を構築するために不可欠なコミュニケーション戦略と言えます。特に、一般的な家電製品の認証スキームから外れることが多いこの製品カテゴリーにおいては、メーカー自身による情報開示の透明性が、製品の信頼性を判断する上で重要な要素となります。

第8章:結論と戦略的推奨事項

分析結果の要約

セントラル浄水器は、日本の家庭において、家全体の水道水を一括して浄化する包括的なソリューションです。その主な特徴は、水道メーター直後に設置し、キッチン、浴室、洗面所、トイレ、洗濯など、家中のすべての蛇口から浄水(お湯を含む)を供給できる点にあります。

主な利点としては、残留塩素除去による水質改善(味・臭いの向上)、特に浄水されたお湯による入浴・シャワーでの肌や髪への刺激軽減・快適性向上が挙げられ、これが日本の消費者にとって強い魅力となっている可能性が示唆されます。また、家中で常に浄水が使える利便性、室内スペースの節約もメリットです。

一方で、主な欠点としては、数十万円に及ぶ高額な初期費用(本体+設置工事費)、専門業者による設置工事の必要性、そして1~2年ごとの専門業者によるフィルター交換とそれに伴う維持費用が挙げられます。また、製品選択の難しさ(限定的な販売チャネル、情報量の偏り)、水圧へのわずかな影響の可能性も考慮すべき点です。

セントラル浄水器はあなたの家庭に適しているか? 選択を導く要因

セントラル浄水器の導入が最適な選択肢となるかどうかは、個々の家庭の状況と優先順位によって異なります。以下の点を考慮することが推奨されます。

  • 主な導入目的: 最も改善したいのは何か? 飲用水の味だけか、それとも入浴・シャワーを含む家全体の水質(特に塩素除去による肌・髪への影響)か? 後者であればセントラル浄水器のメリットは大きいですが、前者であればPOU型でも十分な場合があります。
  • 予算: 高額な初期投資(購入またはレンタル初期費用)と、継続的なメンテナンス費用(年数万円程度)を許容できるか?
  • 住居タイプと設置可能性: 水道メーター周りに設置スペースがあり、配管工事が可能か?(戸建てかマンションか、賃貸か持ち家かなども影響)
  • 長期的な視点: その住居に長期間住む予定があるか?(初期投資を償却できる期間)
  • 手間の許容度: 専門業者との設置・メンテナンスの日程調整や対応を負担と感じるか?
  • 水圧への感度: 現在の水圧に不満がある、またはわずかな水圧低下も避けたいと考えているか?

導入検討者への最終的なアドバイス

セントラル浄水器の導入を具体的に検討する際には、以下のステップを踏むことが賢明です。

  • 徹底的な情報収集: 関心のあるブランドについて、公式サイトや比較サイト、利用者のレビュー(本レポートで参照した情報源以外も含む)などを通じて、性能、特徴、フィルター寿命、保証内容などを詳しく調査します。JIS S 3201などの客観的な性能データを確認することも重要です。
  • 見積もりの取得と比較: 複数のメーカーや販売・設置業者から、本体価格(購入の場合)、設置工事費、フィルター交換費用、メンテナンスサービスの内容と費用について、詳細な見積もりを取得し比較検討します。レンタルプランについても、総支払額や契約条件をよく確認します。
  • 代替案との比較検討: セントラル浄水器の包括的なメリットと、POU型浄水器の手軽さ・低コストというメリットを、自身のライフスタイルや予算、最も解決したい課題に照らし合わせて、冷静に比較検討します。

セントラル浄水器は、家全体の水質を向上させ、特に肌や髪への配慮、生活の快適性を高める上で大きな可能性を秘めた設備です。しかし、その導入には相応のコストと手間が伴います。本レポートで提供した情報が、各家庭にとって最適な水環境を実現するための一助となれば幸いです。

引用文献

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  35. 安全性について | 【イーテック公式】家中まるごと浄水器®全蛇口浄水, 4月 10, 2025にアクセス、 https://etec.jp/purecentral04
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