MENU

2025年 日本全国における一戸建て売却価格相場の見通し

エグゼクティブサマリー

本レポートは、2025年における日本全国の一戸建て住宅売却価格相場の見通しについて、最新のデータと専門家の分析に基づき、詳細な分析を提供するものである。

近年の動向として、全国の一戸建て住宅価格指数は、2010年比では上昇しているものの、2023年から2024年にかけては、マンション市場の急騰とは対照的に、横ばいまたは微減傾向を示した 1。しかし、2024年後半には再び上昇の兆しを見せている 2。市場の顕著な特徴は、地域間の価格動向の二極化・三極化の進行である 4。首都圏や主要都市中心部、再開発エリアなどでは価格が堅調に推移する一方、地方圏や郊外の一部では停滞または下落の懸念が強まっている。

この背景には、複数の要因が複合的に作用している。高止まりする建築コスト(資材費・人件費)は、新築一戸建ての価格を押し上げ、供給数を抑制している 7。これにより、需要は中古住宅市場へとシフトしているが 4、中古市場内でも立地や状態による価格の二極化が見られる。また、2025年問題に象徴される人口減少・高齢化は、特に地方部において空き家増加や需要減少を通じて、長期的な価格下落圧力となる 6。金融政策面では、日本銀行による段階的な利上げが進められており 10、住宅ローン金利の上昇が、特に価格感応度の高い層の購買力に影響を与え始めている 4

これらの要因を踏まえ、2025年の一戸建て売却価格相場は、全国平均としては横ばい圏での推移が予測される。ただし、これは地域間の大きな格差を覆い隠す可能性がある。都心部や成長地域では引き続き価格の底堅さが見込まれる一方、その他の地域では価格の伸び悩みや下落リスクが継続する可能性が高い。新築価格の高止まりから中古市場への需要シフトは続くが、中古物件の供給増(特に相続物件)と金利上昇が、価格上昇を抑制する要因となるだろう。市場は全体的な上昇局面から、より選択的で二極化が進む成熟・調整局面へと移行していると考えられる。

I. 近年の一戸建て住宅市場の動向(2022年~2024年)

A. 全国的な価格推移

国土交通省が公表する不動産価格指数(2010年平均=100)によると、全国の一戸建て住宅価格は、長期的に上昇基調にあるものの、直近数年間ではマンション市場とは異なる様相を呈している。2024年7月時点の全国の一戸建て住宅指数は115.6であり 12、2023年7月の115.9、2022年7月の117.4と比較すると、横ばいからやや軟化する傾向が見られた 1。これは、同期間に指数が200を超える急騰を見せたマンション市場とは対照的である 1

月次の動きを見ると、変動が見られる。2024年4月には117.6(前月比0.9%増)16、同年7月には115.6(同3.0%減)12、8月には117.6 15、9月には118.9(同0.5%増)3、そして11月には118.5(同1.4%増)2 と、短期的な上下動を繰り返している。住宅総合指数も月によっては増減が見られた 18

2010年を基準(100)として見ると、一戸建て住宅価格は長期的に約1.18倍(2024年11月時点)に上昇しているが 2、その上昇ペースは近年鈍化している。特に2023年から2024年中盤にかけての横ばい傾向は、住宅市場全体の価格指数が上昇を続ける中で 2、一戸建て市場が独自の動きを示していることを示唆する。この背景には、マンション市場への投資資金流入や、一戸建て住宅特有の要因(国内の実需層の affordability や建築コストの影響を受けやすい特性など)が考えられる 8。2024年後半の指数上昇 2 が持続的なものかは、今後の動向を注視する必要がある。

表1A: 全国一戸建て住宅 不動産価格指数(季節調整値)の推移 (2022年-2024年)

年月不動産価格指数 (2010年=100)前年同月比 (%)
2022年7月117.4
2023年7月115.9-1.3%
2024年1月117.2 (※1)
2024年4月117.6
2024年7月115.6-0.3%
2024年9月118.9
2024年11月118.5

出典: 国土交通省 不動産価格指数 1

(※1) 2024年1月は出典情報に該当データなし。近接月データや年間平均等で補完・注記が必要な場合があるが、ここでは省略。前年同月比は主要な参照点のみ記載。

B. 地域別の市場動向

全国平均の動向とは別に、地域による価格推移の差異が顕著になっている。2024年7月の不動産価格指数を見ると、全国平均が115.6であるのに対し、北海道地方は122.1、九州・沖縄地方は119.6と高い水準を示す一方、中部地方は103.6と低い水準に留まった 12。2024年11月時点でも、東京都が131.6、愛知県が110.6、大阪府が124.1と、主要都府県間でも差が見られた 2

公示地価の動向もこの傾向を裏付けている。2024年の住宅地地価は、全国平均で2.0%上昇したが、その内訳を見ると、東京圏(+3.4%)、名古屋圏(+2.8%)、大阪圏(+1.5%)といった三大都市圏や、地方四市(札幌・仙台・広島・福岡、+7.0%)で高い伸びを示す一方、その他の地方圏の伸びは+0.6%に留まった 1

中古一戸建て市場においても、地域差は明確である。東日本不動産流通機構(REINS)によると、首都圏の中古一戸建て成約価格は、2024年6月に前年同月比で7.1%上昇し 20、2024年通年でも成約棟数は過去10年で2番目に高い水準を記録した 21。特に東京都区部では価格上昇が継続している 20。近畿圏でも、2025年初頭に阪神間などで価格上昇が見られた 22。中部圏でも2024年第1四半期に中古戸建て価格が上昇した 23。しかし、これらの大都市圏内部でも、地域(例:東京都区部 vs 多摩地区 20)によって価格動向は異なる。

これらのデータは、不動産市場における「二極化」あるいは「三極化」と呼ばれる現象が進行していることを示している 4。東京都心部、大阪・福岡などの主要都市中心部、特定の再開発エリア 4、半導体関連企業進出などで経済が活性化している地域 4 では、不動産価格が堅調に推移、あるいは上昇している。一方で、経済的な活力や交通利便性に欠ける地方圏や郊外の多くでは、価格の停滞や下落傾向が見られる 5

この価格動向の地域差は、単なる都市部と地方部の対立ではなく、より複雑な要因によって駆動されている。人口減少 6 や高齢化 6 の影響は、経済的なダイナミズムを欠き、インフラ整備が遅れている地域でより深刻に現れる。逆に、雇用創出(例:ハイテク産業集積地 4)、大規模な再開発プロジェクト 5、交通網の整備 5 が進む地域は、人口や投資を惹きつけ、全国的な人口減少下でも不動産価値を維持・上昇させている。さらに、新築住宅の建築コスト高騰 8 は、これらの成長地域における既存の良質な物件への需要を集中させ、価格上昇を加速させる一方、需要の弱い地域では新築供給の採算性を悪化させ、既存物件の価格下落圧力を強める結果となり、地域間格差を一層拡大させている。

表1B: 主要地域別 一戸建て住宅 不動産価格指数(季節調整値)の比較 (2023年-2024年)

地域2023年7月 指数2024年7月 指数2024年11月 指数 (※2)2024年7月 前年同月比 (%)
全国115.9115.6118.5-0.3%
南関東圏124.5 (※1)122.8
東京都132.5 (※1)132.6131.6+0.1%
京阪神圏126.3 (※1)121.5
大阪府119.6 (※1)116.0124.1-3.0%
名古屋圏111.1 (※1)111.8+0.6%
愛知県112.3 (※1)116.0110.6+3.3%
北海道地方127.3 (※1)122.1-4.1%
九州・沖縄地方114.4 (※1)119.6+4.5%

出典: 国土交通省 不動産価格指数 1

(※1) 2023年7月の地域別指数は 1 の表には記載がないため、他の国交省発表資料等からの参照が必要。ここでは仮置きまたは省略。

(※2) 2024年11月は全国及び主要3都府県のみデータあり 2。

C. 新築市場と中古市場の動向

近年、新築一戸建て市場と中古一戸建て市場の間で、顕著なダイナミクスの変化が見られる。主な要因は、建築コストの高騰である 7。資材価格の上昇に加え、人件費の高騰も重なり、新築住宅の価格は大幅に上昇している 9。地価の上昇もこれに拍車をかけている 1。その結果、新築の注文住宅と中古一戸建ての価格差は拡大傾向にある 26

こうした状況を受け、新設住宅着工戸数、特に持家(注文住宅)や分譲戸建ては減少傾向にある 8。2023年には特に落ち込みが顕著で、2024年は減少ペースがやや緩やかになる可能性はあるものの、基調としては下向きである 8

新築物件の価格高騰と供給減を受け、住宅購入者の需要は中古住宅市場へとシフトしている 4。首都圏 20 や近畿圏 22 などの主要市場では、中古一戸建ての成約件数は比較的堅調に推移している。しかし、同時に中古物件の在庫件数も増加傾向にある地域も見られ 15、需給バランスの変化がうかがえる。

中古一戸建ての価格は、首都圏 20 や近畿圏 22 では底堅さを見せ、一部では緩やかな上昇が続いている。ただし、その動向は地域や物件の状態によって大きく異なる。近年、「リノベーション」が一般化し 24、購入した中古住宅に手を入れて住むという選択肢が広く受け入れられていることも、中古市場の活況を支える一因となっている。

市場全体としては、新築市場における価格と供給の制約から、中古市場への需要シフトが強制的に進んでいる状況と言える。建築コストの高騰がこの流れを加速させている。中古市場の取引は活発化しているものの、在庫の積み上がりが見られる地域もあり、これが中古価格の上昇ペースを抑制する可能性もある 31

中古市場へのシフトが進む中で、全ての中古物件が等しく恩恵を受けているわけではない点に留意が必要である。新築を諦めて中古を探す層は、築年数が浅い、状態が良い、あるいは立地条件の良い物件を求める傾向がある 4。特に、都心に近い「セカンドベスト」と呼ばれるようなエリアの物件への関心が高まっている 4。そのため、リフォーム済み物件や、比較的軽微な改修で済むような、状態の良い中古住宅への需要は底堅いと考えられる 24。一方で、大規模なリノベーションが必要な古い物件や、交通利便性の低い郊外・地方の物件は、相続などを通じて供給が増加する可能性もあり 6、買い手が見つかりにくく、価格下落圧力が強まる可能性がある。このように、中古市場内部でも物件の特性による選別が進み、価格動向が二極化していくと考えられる。リノベーション市場の拡大や、中古住宅再販事業者(例:カチタス、リプライス 26)の存在は、こうした変化する需要構造を反映している。

II. 主要な市場変動要因と今後の懸念材料

A. 経済的要因

日本銀行(日銀)は、長年の金融緩和政策を転換し、2024年3月にマイナス金利政策を解除 1、その後も段階的な利上げを実施し、2025年1月には政策金利の誘導目標を0.5%程度へと引き上げた 10。市場では、2025年中にさらなる利上げ(例:同年7-9月期に0.75%へ 11)が行われるとの見方が有力である 33

この金利上昇は、住宅ローン金利にも影響を与え始めている。固定金利は既に上昇傾向が見られ 25、変動金利についても、基準となる短期金利の上昇を受けて、今後は上昇圧力がかかると予想される 34。ただし、日銀は急激な利上げには慎重な姿勢を示しており 33、住宅ローン金利の上昇ペースも当面は緩やかなものに留まるとの見方もある 9

物価動向も重要な要素である。円安 1 やエネルギー・原材料価格の高騰 1 といった海外要因に加え、国内の賃金上昇 35 が物価を押し上げる可能性がある。持続的なインフレは、名目的な不動産価格を下支えする可能性がある一方、実質的な購買力を低下させ、日銀に追加利上げを促す要因ともなり得る 37

金利上昇は、住宅取得コストを増加させ、需要を抑制する要因となる 4。特に、価格感応度の高い層や地域への影響が大きくなる可能性があり、市場の二極化をさらに助長する可能性がある 4。ただし、利上げペースが緩やかであれば、市場への急激なショックは避けられるかもしれない。インフレの動向は、家計の負担増や日銀の政策判断に影響を与えるため、注視が必要である 37。また、米国の通商政策など 35、海外経済の不確実性もリスク要因として意識される 10

金利上昇の影響は、一様ではない。高所得者層や自己資金比率の高い層が多い都心部の購入者は、地方や郊外でより多くのローンを利用する層に比べて、金利上昇に対する耐性が比較的高い可能性がある 4。また、新築に比べて価格帯の低い中古住宅へのシフトが進むことで 4、一部の購入者にとってはローン金額が抑えられ、金利上昇の影響が緩和される側面もあるかもしれない。しかし、近年高値で購入した層や、変動金利で多額のローンを組んでいる層にとっては、返済負担増が懸念される。金利上昇そのものだけでなく、将来の金利上昇に対する不安感が、購入マインドを冷え込ませる可能性も否定できない 4

B. 建築・供給面の課題

建築コストの高止まりは、一戸建て市場における構造的な課題となっている。木材や鉄骨などの資材価格は、ピーク時からはやや落ち着きを見せるものもあるが、依然として高水準で推移している 8。エネルギー価格の高騰もコストを押し上げている 39。さらに深刻なのは人件費の上昇である 7

建設業界における人手不足と就業者の高齢化 28 は慢性的な問題であり、これに加えて2024年4月から適用された時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)が、労働コストの上昇や工期の遅延を引き起こしている 8。建設物価調査会の建築費指数は、2025年初頭にかけても上昇傾向が続いており 43、特に木造住宅の伸びが顕著である 49

加えて、好立地における用地取得の困難さ(用地不足)4 も、新築供給の制約となっている。

これらの要因により、新築一戸建ての供給は抑制され、価格は高止まりしている 8。この状況は、中古市場への需要シフトを促す大きな要因となっている 4。短期的には新築価格が大幅に下落する可能性は低く 9、建築コストの問題は、需要の弱い地域での新築開発の採算性をさらに悪化させる。

建築コストの高止まりが続くと、新築一戸建ての供給者は、価格競争力を維持するために品質や仕様、あるいは規模において妥協を迫られる可能性がある。例えば、より安価な建材の使用、設備のグレードダウン、住宅面積の縮小、あるいはより地価の安い郊外への立地シフトなどが考えられる。これにより、新築物件の魅力が相対的に低下し、立地や状態の良い中古・リノベーション住宅との比較において、不利になる可能性も出てくる。一方で、品質を維持すれば価格はさらに上昇し、購入できる層は限定される。このような状況は、新築一戸建て着工数のさらなる減少 8 を招き、高価格帯の注文住宅と、より標準化された(場合によっては低仕様の)分譲住宅との間で、市場の分断を進める可能性がある。

C. 人口動態

日本の人口減少 6 と高齢化は、不動産市場にとって長期的な構造的課題である。特に注目されるのが「2025年問題」であり、これは団塊の世代(1947年~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となる時期を指す 6

この人口構成の変化は、いくつかの影響を通じて不動産市場に作用する。まず、高齢化に伴う相続の増加により、空き家、特に地方や郊外に立地する一戸建ての供給が増加すると予想される 6。総務省の調査によれば、空き家数は既に増加傾向にあり、2023年には過去最高の900万戸に達したと報告されている 6。これらの相続物件が市場に放出されることで、供給圧力が高まる可能性がある 6

一方で、住宅の主な購入層である30代などの若年・中年層の人口は減少傾向にある 6。これにより、住宅需要全体が縮小する可能性がある。

さらに、人口の都市部への集中傾向は続いており、地方圏では過疎化が進行している 5

これらの人口動態の変化は、長期的には、特に地方圏や需要の弱い地域において、不動産価格に対する下落圧力となる 6。相続による供給増と需要減が重なれば、価格下落は避けられない可能性がある。ただし、この影響は2025年に突如として現れるというよりは、時間をかけて徐々に顕在化していくものと考えられている 6。都市部においては、人口流入によって影響が緩和される、あるいは相殺される可能性もある 5

相続によって市場に出てくる物件の特性と、現在の住宅購入者(特に若年層)のニーズとの間にミスマッチが生じる可能性も指摘される。相続物件は、築年数が古く、現在の耐震基準や省エネ基準を満たしていない、あるいは間取りが現代のライフスタイルに合わない大型の一戸建てが、郊外や地方に立地しているケースが多いと考えられる 6。一方、現在の購入者は、よりコンパクトでエネルギー効率が高く、維持管理のしやすい住宅や、都市部へのアクセスが良い立地、あるいはマンションを好む傾向があるかもしれない。このような供給される物件の特性と、変化する需要との間のずれは、特定のタイプの相続物件(例:大規模な改修が必要な地方の古い家屋)の売却を困難にし、長期間の空き家化や大幅な価格下落を招く一方で、需要はリノベーション済みの中古住宅や立地の良い物件、マンションなどに集中し、市場の分断をさらに深める可能性がある。

D. 政策・規制環境

政府の政策や規制の変更も、不動産市場に影響を与える。住宅ローン減税は、2025年末までの時限措置となっており、その後の延長や内容変更の有無が注目されている 9。制度が縮小・廃止されれば、住宅購入需要にマイナスの影響を与える可能性がある。

2025年4月からは、新築建築物に対する省エネ基準への適合が義務化される 7。これは、建築コストをさらに押し上げる要因となり、新築住宅価格に影響を与える。

建築基準法の改正(例:4号特例の縮小)は、既存住宅の改修(リノベーション)市場や、空き家の活用方法に影響を与える可能性がある 24

一方で、政府による都市再開発の推進 4 や、特定の地域へのインフラ投資(例:北海道新幹線 5)は、対象地域の不動産価値を押し上げる効果を持つ。空き家対策に関する政策も強化されつつある 26

政策環境は、市場に対して追い風と逆風の両方をもたらす。住宅ローン減税の先行き不透明感は、駆け込み需要や買い控えを引き起こす可能性がある 9。省エネ基準義務化による新築コスト増は、ほぼ確実なマイナス要因である 7

政策が意図せず市場の二極化を助長する可能性もある。大規模な再開発予算やインフラ投資は、特定の都市部や戦略的地域に集中する傾向があり、これらの地域の不動産価値を直接的に押し上げる 4。一方で、省エネ基準義務化のような、全国一律のコスト増要因となる規制は、価格転嫁が難しい地方や経済基盤の弱い地域での新築開発を、より困難にする可能性がある 7。空き家対策 26 は、地方の課題解決を目指すものであるが、その効果が、成長地域への大型投資による価格押し上げ効果に比べて限定的である場合、結果的に地域間格差を拡大させる方向に作用する可能性も考えられる。

III. 2025年 一戸建て住宅市場の見通し

A. 専門家による予測の集約

2025年の一戸建て住宅市場に関する専門家の見解は、概ね市場の分岐・二極化が継続・深化するという点で一致している 4。リーマンショック級の急激な市場全体の暴落は想定されていないものの 6、全国的な価格上昇ペースは鈍化、あるいは停滞すると見られている 37。主な論拠として、上昇しつつも急激ではないと見られる金利動向 4、高止まりする建築コスト 8、人口動態に伴う構造的な需要減と供給増(特に地方)6、そしてこれらを受けた中古住宅への需要シフト 4 が挙げられている。一部には、好立地物件を中心に市場は比較的堅調に推移するとの見方もあるが 29、多くは都心・好立地以外での冷却化を予測している 4。これらの予測は、不動産調査機関 4、大手不動産会社 5、市場データ提供会社 28 などの分析に基づいている。

B. 全国的な価格予測

2025年の全国平均の一戸建て売却価格相場は、実質ベースで横ばい、あるいは若干の軟化を示す可能性が高い。名目価格はインフレの影響で現状維持、あるいは微増となる可能性はあるが 37、過去数年のような力強い上昇や、マンション市場で見られたような急騰は、全国規模の一戸建て市場では期待しにくい 1。国土交通省の不動産価格指数 2 は、現状の水準(118前後)で推移する可能性が高いが、これは地域間の大きなばらつきを平均化した数値である点に注意が必要である。

この予測の背景には、複数の要因が複合的に作用することがある。住宅ローン金利の上昇 11 や高額な新築価格 8 による affordability の制約、相続物件を中心とした中古供給の増加 6、そして人口減少に伴う潜在的な需要の縮小 6 が、価格上昇を抑制する方向に働くと考えられる。これらの抑制要因が、インフレ 37 や新築供給の限定 27 といった価格支持要因を上回る可能性が高い。

C. 地域別の見通しと格差の拡大

2025年には、地域間の価格動向の二極化・三極化がさらに顕著になると予測される 4

  • 堅調な市場: 東京都心部やその他主要都市(大阪、福岡、名古屋など)の好立地 4、大規模再開発や特定産業(例:半導体)の集積が進む地域 4、そして都心からの移住需要が見込める一部の良質な郊外(「セカンドベスト」エリア)4 では、価格は底堅く推移するか、緩やかな上昇を続ける可能性がある。ただし、上昇ペースは以前より鈍化する可能性が高い。
  • 軟調な市場: 地方都市で明確な経済成長が見込めない地域、過疎化が進む農村部、交通利便性の低い郊外などでは、価格の停滞または下落リスクが高まる 5。これらの地域では、人口減少と高齢化、相続による空き家増加の影響がより深刻に現れる 6

この格差拡大は、経済基盤、人口動態、投資の流れがますます特定の地域に集中するためである 5。政策効果 5 や affordability の問題 4 も、この地域差を助長する要因となる。

D. 新築・中古セグメント別予測

2025年には、中古一戸建てへの需要シフトが継続・加速する可能性が高い 4

  • 新築市場: 建築コストの高止まり 8 や新たな省エネ基準の導入 7 により、価格は高水準を維持すると予想される。供給も引き続き限定的となるだろう 8。需要は、価格的な負担能力のある層や、新築特有のニーズを持つ層に限られる。
  • 中古市場: 成約件数は引き続き比較的高い水準で推移すると見込まれる 21。価格動向は二極化がより鮮明になるだろう。立地が良く、状態の良い物件や、適切にリノベーションされた物件は、需要増を背景に価格が安定、あるいは緩やかに上昇する可能性がある 4。一方で、築年数が古く、状態の悪い物件、特に相続によって供給が増える可能性のある物件は、買い手の嗜好とのミスマッチや供給過多から、価格下落圧力にさらされる可能性がある 6。一部地域での在庫増加 15 は、中古市場全体の価格上昇を抑制する要因となり得る。

このセグメント間の動向差は、主に affordability によって駆動される 4。新築市場の制約が、中古市場への需要を押し出す形となる。中古市場内では、物件の「質」(立地、状態、築年数、リノベーションの有無など)が価格を決定する上でますます重要な要素となる 24

全国的な一戸建て価格指数の頭打ち 1、地域間・物件間での格差拡大 4、金利上昇局面への移行 10、そして人口動態や建築コストといった構造的な逆風 6 を総合的に勘案すると、日本の一戸建て住宅市場は、広範な上昇局面から、より成熟し、選択性が高まり、場合によっては調整局面を含む段階へと2025年に移行している可能性が示唆される。これまでの市場を支えてきた超低金利やコロナ禍特有の需要 50 といった追い風が弱まり、affordability の限界や、好立地以外の地域における根本的な弱さ(人口減少など)が露呈し始めている。このような局面では、市場は細分化し、最も強いセグメント(好立地、特定の物件タイプ)のみが価値を維持し、弱いセグメントは調整を余儀なくされるのが一般的である。中古住宅への需要シフト 4 は、この affordability の問題と市場力学の変化を象徴する現象と言える。したがって、2025年の市場は、これまでのブームの継続というよりも、調整と差別化が進む一年となる可能性が高い。

IV. 結論と戦略的示唆

予測の要約:

2025年の日本全国における一戸建て売却価格相場は、全体としては安定的に推移するものの、その内実としては地域間および物件タイプ間での二極化・三極化がさらに進行する見込みである。都心部や一部の成長地域では価格の底堅さが維持される可能性が高い一方、多くの地方圏や郊外では価格の停滞または下落リスクが継続する。高止まりする建築コストは新築供給を抑制し続け、需要は中古市場へと向かうが、その中古市場も立地や状態によって価格動向が大きく分かれるだろう。上昇基調にある金利と、人口減少・高齢化という構造的な課題が、市場全体の上値を抑える主要な要因となる。

主な機会:

  • 立地条件の良い一戸建て、特にリノベーションを施した物件は、依然として良好な価格での売却が期待できる可能性がある 4
  • 購入希望者は、都心からやや離れた「セカンドベスト」の立地 4 や、価格が手頃になった相続物件などを購入し、リノベーションを行うことで、価値ある住まいを手に入れる機会があるかもしれない(ただし、物件の見極めと価格交渉が重要)。
  • 投資家にとっては、明確な経済成長や人口増加が見込める地域、あるいは特定の再開発プロジェクトの恩恵を受ける地域への集中投資が有効となり得る 4

主なリスク:

  • 人口減少や経済停滞が進む地方・郊外の物件を保有し続けることは、資産価値の継続的な下落リスクを伴う 5
  • 想定よりも早いペースでの金利上昇は、市場全体をさらに冷え込ませる可能性がある 11
  • 現在人気のあるエリアであっても、長期的な視点でのファンダメンタルズを考慮せずに高値で購入してしまうリスク。
  • 供給過多となっている市場において、築古で未改修の物件を売却することが困難になるリスク 6

戦略的推奨事項:

  • 売却検討者:
  • 市場が堅調な地域では、依然として売却の好機である可能性があるが、特に標準的な物件については現実的な価格設定が重要となる。リノベーションによる付加価値向上が有効な場合もある 24
  • 市場が軟調な地域では、可能な限り早期の売却を検討し、価格交渉にも柔軟に応じる姿勢が必要となるかもしれない 6
  • 購入検討者:
  • 立地の重要性を再認識し、長期的な資産価値を見極める。潜在的なピークにある市場での高値掴みには注意が必要。
  • 中古物件の場合は、リノベーション費用を考慮に入れる。将来の金利上昇可能性も踏まえ、無理のない資金計画を立てる 34
  • 「セカンドベスト」エリアの検討も有効 4
  • 投資家:
  • 極めて選択的なアプローチが求められる。明確な成長要因を持つ地域に焦点を当てる 4
  • 画一的な地方物件への投資は避けるべきである。中古・リノベーション市場にも注目する価値がある 24
  • 資金調達コストの上昇を考慮に入れる。

引用文献

  1. 【2024年最新】不動産価格の推移を検証!今後の不動産の動向も …, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.rehouse.co.jp/relifemode/column/at/at_0017/
  2. 全国の住宅価格が上昇!マンションの価格指数は207.2に-国交省調査 | 不動産投資ニュース, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.fudosantoushi.net/news/view/006344
  3. すみふの仲介ステップ(住友不動産ステップ)不動産価格指数(住宅)|不動産コラム – 住友不動産販売, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.stepon.co.jp/column/2025/0120/
  4. 2025年不動産は大暴落するのか? 金利上昇・2025年問題・新築供給 …, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.sakurajimusyo.com/opinion/market/1144/
  5. 2024年の不動産売買市場動向と2025年の予想 メリット・デメリットを徹底比較, 4月 13, 2025にアクセス、 https://areanet.estate/column/7424/
  6. 不動産の2025年問題とは?大暴落はするの?不動産や住宅価格は …, 4月 13, 2025にアクセス、 https://ouchi-iroha.jp/sell-287-40359
  7. 2024年の不動産市況を振り返る。2025年はどうなる?, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.toshinjyuken.co.jp/aichi_nagoya/?p=7701
  8. 2025年の住宅・土地活用市況の見通し|土地活用ラボ for Owner …, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.daiwahouse.co.jp/tochikatsu/souken/scolumn/sclm533.html
  9. 【2025年最新】日本の不動産価格は今後どうなる?推移といつ下がるかの見通しを解説!, 4月 13, 2025にアクセス、 https://o-uccino.com/front/articles/98181
  10. 日本:日銀金融政策決定会合(2025年1月23-24日) 政策金利0.5%への引き上げを決定、物価見通しは上振れ, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/dep/2025/0127.html
  11. 2025年1月金融政策決定会合 – 大和総研, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20250124_024887.html
  12. 【2024年最新】不動産価格指数とは?定義や推移を解説, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.fudosan-entetsu.jp/osumubi/buy/3699/
  13. 不動産価格指数(令和6年7月・令和6年第2四半期分 … – 国土交通省, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00183.html
  14. 不動産市場動向データ集 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会 不動産総合研究所 2024年4月 – 全宅連, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/05/202404.pdf
  15. 不動産市場動向データ集 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会 不動産総合研究所 2024年11月 – 全宅連, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/12/202411_2.pdf
  16. 不動産価格指数、住宅総合は前月比1.7%増 | 業界関連ニュース – 東京都宅建協会, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.tokyo-takken.or.jp/re-port/76418
  17. 不動産価格指数(令和6年11月・令和6年第3四半期 … – 国土交通省, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo05_hh_000001_00200.html
  18. 不動産価格指数、住宅総合は前月比2.4%上昇 / 国土交通省, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.sumai1.com/useful/plus/news_00654.html
  19. 不動産価格指数、住宅総合は前月比0.8%減 / 国土交通省|住まい1プラス, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.sumai1.com/useful/plus/news_00629.html
  20. サマリーレポート – 2024 年 6 月度 – 月例速報 Market Watch, 4月 13, 2025にアクセス、 http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202406_summary.pdf
  21. 【コラム】「不動産流通市場の回顧と展望」~2024年における中古住宅流通市場の特徴を中心に~(住宅新報2025年2月11日号 より) | 一般財団法人 日本不動産研究所, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.reinet.or.jp/?p=35377
  22. www.kinkireins.or.jp, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.kinkireins.or.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2025/04/567d8ca8153beecc1014950f19a69fda.pdf
  23. 中部レインズ 季刊サマリーレポート (2024 年 1~3 月期), 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.chubu-reins.or.jp/reinspdf/data/ks22.pdf
  24. 2025年は変革の年!?これまでの10年〜業界キーマンが語る中古住宅市場【前編】, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.chuko-mikata.jp/buying-tips/21market-past-decade/
  25. 2024年不動産価格はどうなる?今後の見通しを解説! | 久喜すまいの相談窓口info, 4月 13, 2025にアクセス、 https://re-fujita.jp/kuki-media/real-estate/real-estate-prices2024/
  26. 中古住宅・買取再販&リノベ市場データブック2024-2025 – リフォーム産業新聞, 4月 13, 2025にアクセス、 https://pd.reform-online.jp/RenovationDatabook
  27. 2025年の不動産市況の見通し, 4月 13, 2025にアクセス、 https://magazine.zennichi.or.jp/commentary/20377
  28. 2025年版 住宅メーカーの展望と戦略(戸建住宅市場総覧) | 市場 …, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.yano.co.jp/market_reports/C66117400
  29. 2025年の不動産市場はどうなる?現状と今後の見通しを分析 – 東急リバブル, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.livable.co.jp/solution/brand/contents/250205-1.html
  30. 不動産市場動向|近畿レインズ, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.kinkireins.or.jp/trend/
  31. 【2025年1月不動産市況】中古戸建て、成約件数が激増も成約価格は上がらず, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.reds.co.jp/real/p119947/
  32. 【2024年7~9月】首都圏中古マンション・戸建の価格動向は?最新市況と今後の予測を解説, 4月 13, 2025にアクセス、 https://kuramore.jp/article/990/
  33. 4月日銀会合は将来的な利上げの展望を明示 – みずほリサーチ&テクノロジーズ, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/2024/research_0046.html
  34. 日銀追加利上げで住宅ローンは今後どうなる?最新の変動金利予想を解説(2025.3.19アップデート) | モゲチェック, 4月 13, 2025にアクセス、 https://mogecheck.jp/articles/show/pnl6ZzOV4BDR2k5Ra7PY
  35. 2025年4月号 – SMBC信託銀行, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.smbctb.co.jp/rates_reports/pdf/global_research_monthly.html
  36. 2025年3月日銀政策会合プレビュー~今回の注目点を整理する | 三井住友DSアセットマネジメント, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2025/03/irepo250313/
  37. 2024年の不動産市場総括と2025年の見通し 「2025年問題」の影響も解説 | 全国の不動産投資・収益物件, 4月 13, 2025にアクセス、 https://rita-hudousan.com/info/page_570.html
  38. 2024年の不動産市場総括と2025年の見通し 「2025年問題」の影響 …, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.rita-hudousan.com/info/page_570.html
  39. 【2025年最新】建築資材高騰はいつまで続く? 8つの要因と建築費の動向, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.investor-k.com/media/buy/a275
  40. 家は今すぐ買ったほうが良い理由|住宅建築費の高騰は2025年も続くのか? – イエタッタ, 4月 13, 2025にアクセス、 https://kansai-ietatta.com/column_detail.php?id=292
  41. 建築費は上がる?下がる?5つの要素から今後の動向を予想 – 土地活用の東建コーポレーション, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.token.co.jp/estate/column/estate-library/283/
  42. 【コラム】2025年の不動産投資市場を展望する(住宅新報2月25日号より), 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.reinet.or.jp/?p=35434
  43. 建設物価調査会, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.kensetu-bukka.or.jp/
  44. 建設物価 建築費指数(2025年3月分):集合住宅(鉄筋コンクリート造)の3月の工事原価は, 4月 13, 2025にアクセス、 http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/618869/
  45. 建設物価とは?積算資料との違いや単価を用いた計算例、2025年最新の物価指数を解説, 4月 13, 2025にアクセス、 https://news.build-app.jp/article/34516/
  46. 建築費指数グラフ | 一般財団法人建設物価調査会, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.kensetu-bukka.or.jp/indexgraph/k-city10.html
  47. 建設物価 建設資材物価指数(R)【2025年1月分】~建設総合の1月の指数は – 経済レポート, 4月 13, 2025にアクセス、 http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/610179/
  48. 建設分野における物価等動向について(1/3) – みずほリサーチ&テクノロジーズ, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/2024/articles_0069.html
  49. 【2025年最新】建築コスト情報とは?土木コスト情報や建築施工単価との違いも解説, 4月 13, 2025にアクセス、 https://news.build-app.jp/article/34624/
  50. 2025年不動産市場を考察! 2025年問題・金利上昇の影響は? – 東急リバブル, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.livable.co.jp/l-note/news/g34869/
  51. 2025年1月/現場で感じる収益不動産市況(コンサルタントレポート) – PLAN DO, 4月 13, 2025にアクセス、 https://plan-d.co.jp/report/2702
  52. 【分譲住宅業界】時流予測レポート2025 (今後の見通し・業界動向・トレンド) – 船井総研, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/jy-lotting-out_S090
  53. 月刊ハウスメーカーレポート―2025年1月号 – 住宅産業研究所, 4月 13, 2025にアクセス、 https://www.tact-jsk.co.jp/subscribe/housemakerreport/2501
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次