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結婚相談所経由の結婚における離婚率分析:現状と2025年に向けた展望

目次

エグゼクティブサマリー

本レポートは、日本の結婚相談所を通じて結婚した夫婦の離婚率に関する現状分析と、2025年に向けた展望を提供するものである。主要な調査結果として、結婚相談所経由の夫婦の離婚率に関する信頼性の高い公的統計や業界全体の統一されたデータは存在しないことが明らかになった。厚生労働省が発表する人口動態統計では、出会いの経緯別の離婚率は集計されていない。

一方で、結婚相談所業界や関連情報サイトでは、離婚率が約10%と低水準であるという主張が広く見られるが、これらの数値は多くの場合、客観的なデータや調査に基づくものではなく、事業者側の見解や推定に過ぎない可能性が高い。限定的な民間調査では、これと矛盾する結果(例:38%の離婚率)も報告されているが、サンプル数の少なさなどから一般化は困難である。

日本の全体的な離婚傾向としては、2000年代初頭をピークに普通離婚率(人口千対)は緩やかな減少傾向にあるものの、依然として年間18万組近い離婚が存在する。特に「特殊離婚率」(年間離婚件数÷年間婚姻件数)に基づくいわゆる「3組に1組が離婚」という表現は、統計的な誤解を招きやすく、個々の夫婦の離婚リスクを正確に反映するものではない。

結婚相談所を通じた結婚は、事前の条件確認や結婚への意欲の高さなどから、理論的には離婚リスクを低減する可能性がある。しかし、現状ではその効果を定量的に証明するデータは不足しており、離婚率の低さを過度に強調する言説には注意が必要である。2025年の離婚率を正確に予測することは不可能であり、今後の動向は、社会全体の離婚・結婚観の変化や結婚相談所サービスの進化などに影響されると考えられる。

1. 日本における離婚の動向:公的統計に基づく分析

1.1 厚生労働省による最新の離婚統計

日本の離婚に関する最も信頼性の高い基礎データは、厚生労働省が毎年公表する「人口動態統計」である 1。最新の確定データに基づくと、日本の離婚件数および離婚率は以下のように推移している。

  • 離婚件数: 平成14年(2002年)に約29万組でピークに達した後、減少傾向が続いている 3。令和2年(2020年)は約19万3千組 3、令和3年(2021年)は約18万4千組 6、令和4年(2022年)は17万9,096組であった 7
  • 普通離婚率(人口千対): 人口1,000人あたりの離婚件数を示すこの指標も、2002年の2.3件をピークに減少傾向にある 7。令和4年(2022年)は約1.47件 7、令和5年(2023年)の概数では1.52件と若干の上昇が見られた 10。近年の離婚率は、2010年以降2.0を下回っており、全体としては減少傾向にあると言える 4

これらの公式統計は、日本の離婚状況の全体像を把握する上で不可欠な基準となる。

1.2 離婚率の指標:解釈上の注意点

離婚率について語る際には、用いられる指標の定義を正確に理解することが重要である。

  • 普通離婚率(人口千対): 前述の通り、人口1,000人あたりの年間離婚件数を示す。国際比較などで一般的に用いられるが、人口の年齢構成の影響を受ける 7
  • 特殊離婚率: 年間の離婚件数を同年の婚姻件数で割った割合。しばしば「3組に1組が離婚」という表現の根拠とされる 7。例えば、令和4年(2022年)は約35.5%(離婚179,096組 ÷ 婚姻504,878組)であった 7。しかし、この指標は、その年に結婚した夫婦とその年に離婚した(過去に結婚した)夫婦という異なる集団を比較しているため、特定の夫婦が将来離婚する確率を示すものではない点に注意が必要である 8。婚姻件数の減少もこの比率を押し上げる要因となりうる 13
  • コーホート離婚率(累積離婚確率): 特定の年に結婚した夫婦(結婚コーホート)を追跡し、結婚後一定期間(例:5年、10年、20年)内に離婚した割合を示す。これは、ある世代の夫婦の離婚リスクをより正確に測る指標である。研究によれば、日本の夫婦の約22%が結婚後20年以内に、3分の1が30年以内に離婚する可能性があると推計されており、「特殊離婚率」が示すよりも実際の離婚リスクは低い可能性がある 14

一般的に流布している「3組に1組」という数字は、現状の社会的な変動を示す指標ではあるが、個々の結婚の安定性を判断する際には、より実態に近いコーホート分析などの結果を参考にすべきである。

1.3 日本の離婚における主要な人口統計学的要因

厚生労働省のデータからは、離婚に至る夫婦の属性に関するいくつかの傾向が読み取れる。

  • 同居期間: 離婚した夫婦の同居期間を見ると、5年未満が最も多く、特に同居後2~3年での離婚が多い 7。令和4年(2022年)では、5年未満の離婚が52,608組で最多であった 7。一方で、同居期間20年以上の「熟年離婚」も相当数存在し、同年の離婚件数は38,990組であった 4。離婚までの平均同居期間は約12年とされている 7
  • 年齢: 離婚時の年齢は、夫は30代(特に35~39歳)、妻は20代後半から30代(特に30~34歳)で最も多くなる傾向がある 7。年齢が上がるにつれて離婚率は低下するが、前述の通り熟年離婚も無視できない。
  • 地域差: 離婚率には顕著な地域差が見られる。沖縄県が継続して全国で最も高い離婚率を示す一方、富山県、新潟県、秋田県などは低い傾向にある 10。これは、地域の文化や社会経済的背景の違いを反映している可能性がある。
  • 離婚の種類: 離婚の約9割は夫婦間の合意に基づく「協議離婚」である。次いで家庭裁判所での調停による「調停離婚」が多く、裁判による「判決離婚」は全体の1%程度と少ない 3
  • 国際結婚: 夫婦の一方または双方が外国人である国際結婚は、日本人同士の結婚と比較して離婚率が高い傾向が指摘されている 3
  • 社会経済的要因: 雇用形態(非正規雇用)、学歴、収入といった社会経済的地位が低い層で、離婚リスクが相対的に高い可能性を示唆する研究もある 14

これらの要因分析から、離婚は一様な現象ではなく、特定の属性を持つ集団においてリスクが高まる傾向があることがわかる。

表1:近年の日本の離婚に関する主要統計(厚生労働省 人口動態統計)

年次総離婚件数 (組)普通離婚率 (人口千対)特殊離婚率 (%)夫の最多離婚年齢層妻の最多離婚年齢層同居期間5年未満の離婚割合 (%)
2021年184,3841.50約36.830代30代前半約29.1
2022年179,0961.47約35.530-34歳30-34歳約29.4
2023年(未確定)1.52 (概数)(未確定)35-39歳 (概数)30-34歳 (概数)約28.7 (概数)

出典: 厚生労働省 人口動態統計 6, 国立社会保障・人口問題研究所 9

注: 2023年は概数。割合は各年の離婚総数に対する比率。年齢層は資料により若干表記揺れあり。

2. 結婚相談所経由の結婚における離婚率の実態調査

2.1 データ上の課題:公的統計・業界統一データの不在

結婚相談所を通じて結婚した夫婦の離婚率を正確に把握する上で、最大の障壁は信頼できるデータの欠如である。

  • 公的統計の限界: 厚生労働省の人口動態統計では、離婚届に「出会いのきっかけ」を記載する項目はなく、結婚相談所経由の離婚を特定・集計することはできない 1
  • 業界データの限界: 日本結婚相談所連盟(IBJ)や日本ブライダル連盟(BIU)などの主要な業界団体は、会員がサービスを通じて婚約・交際成立に至る「成婚(せいこん)」のデータは収集・公表しているものの、成婚退会後の会員の婚姻状況や離婚率を継続的に追跡・公表しているわけではない 22。IBJが発行する「成婚白書」も、成婚者の属性分析が中心であり、離婚に関するデータは含まれていない 25。IBJは2023年に12,527組の成婚を生み出したと報告しているが 27、その後の追跡データはない。
  • 追跡調査の困難性: 結婚相談所は、会員が成婚退会した後は体系的な接点を失うため、長期的な追跡調査は、コスト、プライバシー保護、回答率確保などの観点から実施が難しい。

この根本的なデータギャップにより、結婚相談所経由の離婚率に関する議論は、推定や限定的な調査、あるいは根拠の不明確な情報に依存せざるを得ない状況にある。

2.2 広く流布する「離婚率10%」説とその信憑性

結婚相談所に関する情報サイトやブログ記事などでは、「結婚相談所で結婚した夫婦の離婚率は約10%と低い」という主張が頻繁に見られる 6。中には「1%未満」といったさらに低い数値を挙げる例もある 11

しかし、これらの情報源の多くは、この「10%」という数字に公的な裏付けや具体的な調査データがないことを自ら認めている場合が多い 22。一部では、相談所のカウンセラーの「肌感覚」に基づくものだとの記述も見られる 30。この数値は、しばしば日本の特殊離婚率(約35%)や恋愛結婚の推定離婚率(30~40%)と比較され、結婚相談所の優位性をアピールする文脈で用いられている。

客観的な根拠が不明確であるため、この「10%」説は、マーケティング的な意図を含む可能性も考慮し、慎重に受け止める必要がある。

2.3 民間調査・研究の結果:限定的かつ矛盾するデータ

結婚相談所経由の離婚率に関する独立した調査研究は極めて少ない。数少ない調査結果も、方法論的な限界や矛盾を抱えている。

  • ノマドマーケティング株式会社の調査(2021年): 全国の既婚男女69名(うち結婚相談所での結婚経験者)を対象としたインターネット調査で、「結婚相談所で出会った相手と離婚した経験がある」と回答した人が38%に上った 35。これは、前述の「10%」説とは大きく乖離する結果である。しかし、この調査はサンプルサイズが極めて小さい(n=69)ため、統計的な信頼性が低く、結果を一般化することは困難である 11
  • MBSテレビ「林先生の初耳学」での言及: マッチングアプリで出会って結婚した夫婦の離婚率は4.5%で、一般的な結婚(6.6%)より低いという調査結果が紹介された 37。ただし、比較対象とされた「一般的な結婚」の離婚率6.6%の算出根拠は不明である 11。また、これはマッチングアプリに関するデータであり、必ずしも結婚相談所全体の実態を示すものではない。さらに、別の分析では、若年層の実際のコーホート離婚率(例:20代後半で約2%、30代で約1% 11)と比較すると、アプリ経由の4.5%という数字はむしろ高い可能性も指摘されている 11
  • その他の調査: リクルートブライダル総研(ゼクシィ)なども結婚や離婚に関する調査を実施しているが、公開されている情報からは、結婚相談所経由の離婚率を特定した分析は見当たらない 38。学術研究においても、離婚の要因分析は行われているが、出会いの経緯として結婚相談所を独立して分析対象とすることは稀である 14

現状では、利用可能な民間調査は数が少なく、方法論的な制約(特にサンプルサイズ)が大きいため、信頼できる結論を導き出すには至っていない。

表2:結婚相談所経由の離婚率に関する推定値の比較

情報源の種類情報源の詳細報告されている離婚率 (%)サンプルサイズ/方法論/備考信頼性評価
一般的な主張/推定値結婚相談所ブログ、情報サイト等約10%根拠不明確、公的データなし、しばしば「と言われている」「肌感覚」と記述 23
一般的な主張/推定値一部の結婚相談所ブログ等1%未満根拠不明確、さらに低い数値 11
民間調査ノマドマーケティング株式会社 (2021年)38%インターネット調査、n=69 (結婚相談所での結婚経験者)。サンプルサイズが極小 11
テレビ番組での言及MBS「林先生の初耳学」(マッチングアプリについて)(4.5%)マッチングアプリのデータ。比較対象(6.6%)の根拠不明。結婚相談所とは異なる 11
公的統計/業界データ厚生労働省、IBJ成婚白書等データなし公的統計は出会いの経緯を不問。業界データは成婚後の追跡なし 1(該当せず)

3. 出会いの経緯別離婚率の比較分析

結婚相談所経由の結婚と、他の出会い方による結婚との間で、離婚率に差があるのか、またその要因は何なのかを考察する。ただし、前述の通り、結婚相談所に関する信頼性の高い離婚率データが存在しないため、ここでの比較は主に推定値や理論的な考察に基づくものとなる。

3.1 結婚相談所 vs 恋愛結婚

  • 離婚率の比較(推定値): しばしば、結婚相談所の離婚率(推定約10%)は、恋愛結婚の離婚率(推定30~40%)よりも低いと主張される 6。しかし、両方の数値とも確固たる統計的根拠に欠ける点に留意が必要である。特に恋愛結婚の30~40%という数字は、日本の特殊離婚率や全体の離婚率と混同されている場合もある。
  • 離婚率に差が生じる可能性のある理論的要因:
  • 事前のスクリーニングと適合性: 結婚相談所では、年収、学歴、家族構成、価値観、結婚後の生活設計など、多岐にわたる条件を事前に確認し、適合性の高い相手を探すプロセスが組み込まれている 6。これにより、離婚理由の最たるものである「性格の不一致」や「価値観の相違」が生じるリスクを、恋愛結婚に比べて低減できる可能性がある 11
  • 結婚への意欲と目的意識: 有料のサービスを利用し、各種証明書の提出など、一定の手続きを経るため、会員は当初から結婚に対する真剣度が高いと考えられる 6。恋愛感情だけでなく、「結婚生活を共に送るパートナー探し」という明確な目的意識が、より現実的な相手選びにつながる可能性がある 40
  • カウンセラーの介在: 専門のカウンセラー(仲人)が、相手紹介から交際中のアドバイス、意思決定のサポートまで行うことで、当事者だけでは気づきにくい相性の問題や、コミュニケーション上の課題を乗り越える助けとなる場合がある 22
  • 現実的な期待値: 結婚相談所での活動は、相手の条件や結婚後の生活について、より具体的かつ現実的に考える機会を促す。これにより、結婚後に理想と現実のギャップに苦しむリスクを減らせる可能性がある 22

3.2 結婚相談所 vs その他の出会い方

  • 伝統的なお見合い: かつて主流であったお見合い結婚は、離婚率が低いとされていた(例:1970年頃は約10% 44)。現在の結婚相談所も、第三者が介在し、条件適合性を重視する点で、伝統的なお見合いと共通する側面を持つ。
  • マッチングアプリ: 前述の通り、離婚率に関するデータは限定的で解釈が分かれる 11。一般的に、結婚相談所に比べて事前のスクリーニングやサポート体制が簡略化されている場合が多く、利用者層や利用目的も多様であるため、一概に比較は難しい 37
  • 授かり婚(できちゃった結婚): 計画性や相互理解が不足したまま結婚に至るケースも多く、離婚率が高い傾向にあると一般的に言われている(ある情報源では約52%とされるが根拠不明 6)。結婚相談所とは対照的なプロセスと言える 23
  • 婚活パーティー: ある情報源では、婚活パーティーで出会った夫婦の離婚率が57%と非常に高いと主張されているが、この数字の信頼性は不明である 6。出会いの場の雰囲気や、短時間での判断が中心となる点が影響している可能性も考えられる。
  • 職場・学校・知人紹介など: これらの出会い方に関する具体的な離婚率データは、提示された資料の中には見当たらない。

3.3 離婚率の違いを生む可能性のある要因(統合的考察)

出会いの経緯によって離婚率に差が生じるとすれば、その背景には以下のような要因が複合的に関与していると考えられる。

  • 選択バイアス: 結婚相談所の利用者は、そもそも結婚への意欲が高く、安定志向が強い層である可能性がある。
  • 情報の対称性: プロフィール等を通じて、相手に関する多くの情報を事前に得られるため、結婚後の「こんなはずではなかった」というミスマッチを減らせる可能性がある 6
  • 構造化されたコミュニケーション: カウンセラーの介在や、交際期間に関するルール(例:IBJの3ヶ月ルール 33)などが、結婚に向けた建設的な対話を促進する可能性がある。
  • 目標志向性: 恋愛感情の高まりだけでなく、「結婚」という共通のゴールに向けて関係性を構築していくプロセスが、より現実的な判断を促す可能性がある。

ただし、これらの要因が実際にどの程度離婚率の低下に寄与しているのかを実証するデータは、現時点では不足している。

4. データ信頼性の評価と課題

結婚相談所経由の離婚率に関する情報を評価する際には、その情報源の特性と限界を理解することが極めて重要である。

4.1 情報源の評価:強みと弱み

  • 公的統計(厚生労働省): 全体的な離婚動向や人口統計学的分析において最も信頼性が高い。しかし、出会いの経緯別データを提供していないため、本調査の核心部分には直接的な答えを与えられない 1
  • 業界団体(IBJ、BIU等): 自社ネットワーク内の「成婚」に関するデータ(成婚者数、成婚者の属性など)は正確である可能性が高い 26。しかし、成婚後の離婚に関するデータは公表しておらず 25、広報資料などではポジティブな情報に偏る可能性がある。
  • 民間調査(ノマドマーケティング、テレビ番組等): 特定の視点からのデータを提供する可能性はあるが、サンプルサイズの小ささ、調査方法の不透明さ、結果の矛盾など、信頼性には大きな疑問符が付く場合が多い 11
  • 推定・口コミ・ブログ記事: 「離婚率10%」説のように広く流布している情報もあるが、検証可能な根拠を欠き、マーケティング的な意図や希望的観測に基づいている可能性が高い 23。信頼性は極めて低いと評価すべきである。
  • 学術研究: 一般的に厳密な方法論に基づいているが、結婚相談所という特定の出会いの経緯に焦点を当てた離婚研究は少ない。多くは、学歴、収入、同居期間といった、より一般的な要因分析が中心である 14

4.2 統計的誤解への警鐘

  • 「特殊離婚率」の罠: 「3組に1組が離婚」という表現の基になる特殊離婚率は、個々の結婚の将来的なリスクを示す指標としては不適切であることを再度強調する必要がある 7。この数値を、特定の出会い方(例:恋愛結婚)の離婚率として安易に引用することは誤解を招く。
  • 「成婚率」と「離婚率」の混同: 結婚相談所がアピールする「成婚率」は、あくまでサービス内でのマッチング成功率であり、その後の結婚生活の継続率(低い離婚率)を保証するものではない。高い成婚率が低い離婚率に直結するとは限らない。

4.3 主要な情報ギャップの特定

  • 核心的データの欠如: 結婚相談所経由の夫婦を対象とした、大規模かつ長期的な追跡調査が存在しないことが最大の問題点である。
  • 業界標準の不在: 離婚率に関する信頼できるデータを収集・公表するためには、業界内での統一された定義やデータ収集方法の確立が必要となる。
  • 情報公開の不足: 主要な結婚相談所事業者が、成婚退会後の会員の追跡調査データ(もし存在する場合)を公表していない。

結論として、結婚相談所経由の離婚率に関する現在の理解は、非常に不確かな根拠の上に成り立っている。流布している情報に対しては、常に批判的な視点を持つことが求められる。

5. 結論と2025年に向けた展望

5.1 結婚相談所経由の離婚率に関する知見の要約

本分析の結果、結婚相談所を通じて結婚した夫婦の離婚率について、確固たるデータは存在しないことが確認された。「約10%」という低い離婚率がしばしば主張されるものの、これを裏付ける信頼性の高い証拠はなく、限定的ながらも矛盾する調査結果(38%)も存在する。

これに対し、日本の全体的な離婚率は、普通離婚率(人口千対)で約1.5前後、特定の結婚コーホートを追跡した研究では生涯リスクとして20~30%程度と推定されるなど、より信頼性の高いデータが存在する。

結婚相談所が提供するサービス(事前の条件確認、結婚への意欲確認、カウンセラーによるサポートなど)は、理論上、結婚後のミスマッチを減らし、離婚リスクを低減する可能性がある。しかし、これらの要因が実際にどの程度効果を発揮しているかを定量的に示す証拠は、現時点では決定的に不足している。

5.2 2025年に向けた動向予測の限界

利用可能なデータの制約から、2025年時点での結婚相談所経由の夫婦の離婚率を具体的に予測することは不可能である。

今後の動向を推測する上で参考にできるのは、より信頼性の高い日本全体の離婚トレンドである。近年の普通離婚率は比較的安定、もしくは緩やかな減少傾向を示している 3。社会構造や価値観に急激な変化がなければ、この傾向が大きく変わる可能性は低いかもしれないが、短期的な変動は常にあり得る。

結婚相談所業界自体の変化(例:AIマッチングの導入、利用者層の変化、オンライン化の進展 26)や、マクロ経済状況、結婚・離婚に対する社会規範の変化などが、将来的に結婚相談所経由の夫婦の離婚動向に影響を与える可能性はあるが、その方向性や度合いを予測することは困難である。

最も妥当な見方としては、結婚相談所経由の離婚率も、大きな社会全体のトレンドから著しく乖離することはないだろうと想定しつつ、具体的な数値予測は避けるべきである。

5.3 データ解釈に関する最終所見

離婚率に関する情報に接する際には、指標の定義を正確に理解し、情報源の信頼性を常に問う姿勢(データリテラシー)が重要である。特に、マーケティング目的で提示される可能性のある、根拠の薄い数値には注意が必要である。

結婚相談所は、相性の良いパートナーを見つけるための有効な手段の一つとなり得るが、その価値は「離婚率が低い」という未証明の主張に依存すべきではない。むしろ、自分に合った相手を見つけるためのプロセスやサポート体制に焦点を当てるべきである。最終的に結婚生活が継続するかどうかは、出会いの方法以上に、夫婦となった二人の努力と関係性構築に大きく依存する。

結婚相談所の利用を検討する際には、離婚率に関する不確かな情報に惑わされることなく、サービス内容や自身の婚活スタイルとの適合性を吟味し、現実的な期待を持って臨むことが賢明と言えるだろう。

引用文献

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  5. 結婚相談所の離婚率が低い理由は?リアルな実態や長続きのポイントを解説 – オーネット, 4月 14, 2025にアクセス、 https://onet.co.jp/marriage_column/2933.html
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  29. 【意外】結婚相談所のスピード離婚は多い?スピード離婚の原因と破局を防ぐ5つの対策, 4月 14, 2025にアクセス、 https://www.granpaz.co.jp/partners/blog/25/
  30. 結婚相談所の離婚率は約10%|低い離婚率の理由を解説, 4月 14, 2025にアクセス、 https://www.nanahoshi-marriage.jp/blog/rikonritu/
  31. 離婚率!一般婚は35%!結婚相談所婚は1~10%! – 結婚相談所ブログ – 【成婚率が高いTMS】, 4月 14, 2025にアクセス、 https://www.nakoudonet.com/nakoudo/pref/tokyo/tokyo-ota/%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A5%E7%94%B0%E5%9C%92%E8%AA%BF%E5%B8%83/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/%E9%9B%A2%E5%A9%9A%E7%8E%87%EF%BC%81%E4%B8%80%E8%88%AC%E5%A9%9A%E3%81%AF35%EF%BC%85%EF%BC%81%E7%B5%90%E5%A9%9A%E7%9B%B8%E8%AB%87%E6%89%80%E5%A9%9A%E3%81%AF%EF%BC%91%EF%BD%9E10%EF%BC%85%EF%BC%81/
  32. 結婚相談所の離婚率10%は嘘|独自調査で暴かれた真実。 – ナレソメノート, 4月 14, 2025にアクセス、 https://naresome.net/marriage-agency-divorce-rate-truth/
  33. 3ヶ月の交際期間ルールが幸せになれる結婚相談所の理由です。, 4月 14, 2025にアクセス、 https://konkatsu-tobira.jp/35770
  34. 離婚ねぇ・・・ | 日本結婚相談所連盟(IBJ)正規加盟店 結婚相談所 スプラウト阪神のブログ, 4月 14, 2025にアクセス、 https://ameblo.jp/sprout-hanshin/entry-12711876751.html
  35. 結婚相談所の本当の成婚率とは?【年代別】【成婚までの期間】【その後の離婚率】までを徹底調査, 4月 14, 2025にアクセス、 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000059676.html
  36. 結婚相談所の離婚率は高い?成婚後に別れを避けるためのコツとおすすめ結婚相談所, 4月 14, 2025にアクセス、 https://kekkon.kuraveil.jp/column/1657
  37. 結婚相談所の離婚率は一般的結婚より高い?【林先生の初耳学から検証】, 4月 14, 2025にアクセス、 https://morito-yuko.com/divorce-rate/
  38. 離婚に関する調査|マーケットを読む・調査データ|リクルート …, 4月 14, 2025にアクセス、 https://souken.zexy.net/research_news/divorce_report/
  39. 結婚相談所で成婚すると離婚率が低くなる?離婚率を下げるためのお相手の選び方について, 4月 14, 2025にアクセス、 https://www.p-a.jp/word/2018-02-3.html
  40. 結婚相談所で成婚したカップルは離婚率が低いってホント?, 4月 14, 2025にアクセス、 https://www.tms-p.co.jp/column/2612/
  41. 結婚相談所で結婚した人の離婚率が低いと言われる理由 – IBJ, 4月 14, 2025にアクセス、 https://www.ibjapan.com/marriage/konkatsu_technique/p_8900/
  42. 結婚相談所で出会った夫婦のほうが離婚しにくい!?離婚率が低い理由とは, 4月 14, 2025にアクセス、 https://kekkon.kuraveil.jp/column/1148
  43. 結婚相談所の離婚率が低い5つの理由と成婚後の破局を防ぐポイント, 4月 14, 2025にアクセス、 https://miraino-marriage.jp/column/2025/01/divorcerate/
  44. 結婚相談所のお見合い結婚は離婚率が低くなるの? – 結婚相談所relife(リライフ), 4月 14, 2025にアクセス、 https://relife-marriage.com/divorce-rate/
  45. 令和4年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業 (未婚化・晩婚化・晩産化等の少子 – 経済産業省, 4月 14, 2025にアクセス、 https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000418.pdf
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