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株式会社IBJ:2025年 全国事業展望と市場分析

エグゼクティブサマリー

本レポートは、日本の婚活市場におけるリーディングカンパニーである株式会社IBJ(日本結婚相談所連盟、東証プライム:6071)の2025年における全国的な事業展開、市場での位置づけ、および将来展望について、包括的な分析を提供するものである。IBJは、日本最大級の結婚相談所ネットワーク運営を核に、直営相談所、婚活イベント、マッチングアプリ、そして結婚後のライフデザイン支援に至るまで、多岐にわたるサービスを展開している。特に、「IT×ヒト」のハイブリッドモデルを強みとし、テクノロジーによる効率性と、カウンセラー(仲人)によるパーソナルなサポートを融合させることで、高い成婚率を実現している。

2024年には過去最高となる年間16,398組の成婚カップルを創出し、日本の総婚姻数におけるシェアを着実に高めている。2025年初頭時点で、全国約4,500社の加盟相談所と約96,000名の会員数を擁するプラットフォームは、強力なネットワーク効果を生み出し、市場における圧倒的な優位性を確立している。近年は、Zweiやサンマリエといった大手相談所のM&A、オーネットとの資本業務提携、タメニーへの出資など、積極的な市場統合を進めるとともに、保険・不動産・ウェディング関連のライフデザイン事業を強化し、顧客生涯価値の向上を図っている。

2025年に向けては、2027年までに日本の婚姻組数の5%(年間25,000組)を創出するという野心的な目標を掲げ、著名タレントを起用したマーケティング、サービス品質向上(カウンセラー育成強化)、戦略的提携などを積極的に展開している。日本の少子化・未婚化という社会課題への貢献をミッションに掲げ、婚活サービスの需要拡大という追い風を受けながら、IBJは2025年も市場リーダーとしての地位を盤石なものとし、さらなる成長を遂げることが予測される。ただし、低価格なマッチングアプリとの競争激化や、広大なネットワークにおけるサービス品質維持といった課題への対応が、持続的な成長の鍵となる。

I. 株式会社IBJ:企業概要と市場における役割

A. 株式会社IBJ(東証プライム:6071)の概要

分析対象となる株式会社IBJは、東京証券取引所プライム市場に上場する企業(証券コード:6071)である 1。本社は東京都新宿区西新宿に所在し、関西(大阪市北区)および東海(名古屋市西区)にも支社を構えている 2。この拠点網は、同社が主張する全国規模のネットワーク運営を物理的に支え、広範な地域にわたる加盟相談所の管理や会員サポート、イベント開催を可能にする基盤となっている。プライム市場への上場は、同社が一定の事業規模、ガバナンス水準、市場からの認知度を有していることを示唆している。

2025年初頭における同社の時価総額は約227億円と報告されており 3、企業規模の大きさを示している。決算発表(次回予定日:2025年5月9日 3)や月次KPI報告を含むIR情報(投資家向け広報)は、ウェブサイト等を通じて定期的に開示されており 4、上場企業としての透明性と投資家への説明責任を重視する姿勢がうかがえる。なお、類似名称の企業(例:インターネット・ビジネス・ジャパン株式会社 10、石原バイオサイエンス株式会社 11、株式会社アイビージェイ(保険代理店)12)が存在するが、本レポートの分析対象は証券コード6071の株式会社IBJである。

B. 婚活市場における沿革と進化

株式会社IBJは2006年に設立され、結婚相談所プラットフォーム事業を開始し、同時に基幹システムとなるASPシステム「IBJS」をリリースした 1。同年には日本結婚相談業協会(現:日本結婚相談所連盟)を立ち上げている 13。以降、同社はM&A(合併・買収)を成長戦略の柱の一つとして積極的に活用してきた。2007年の日本ブライダルコミュニティー(NBC)子会社化を皮切りに、システム内製化を目的としたエスアイヤ子会社化(2009年)、オンライン婚活強化のためのDiverse完全子会社化(2018年)、そして老舗結婚相談所のサンマリエ(2019年)およびツヴァイ(2020年)のグループ会社化など、矢継ぎ早に事業規模を拡大した 1。これらの買収は、IBJが単なるプラットフォーム提供者から、多様な婚活サービスを傘下に持つ複合企業体へと変貌を遂げる上で、決定的な役割を果たした。特にサンマリエやツヴァイといった、それぞれ異なる市場ポジショニングを持つ確立されたブランドを統合したことは、IBJの直接的な消費者リーチを大幅に拡大し、中核であるプラットフォーム事業を補完する強力な直営部門を形成することにつながった。これにより、運営上のシナジー創出や、より広範な顧客層へのアプローチが可能になったと考えられる。

株式市場においても、2012年のJASDAQ上場から、2014年の東証二部、2015年の東証一部、そして2022年のプライム市場移行へと、着実にステップアップを果たしている 1。この市場区分の変更は、単に企業規模の拡大を示すだけでなく、より厳しい財務基準やコーポレート・ガバナンス基準を満たしてきた証左であり、持続的な事業成長と経営基盤の強化を反映している。これは投資家からの信頼を高めるだけでなく、結婚という人生の重要な選択に関わるサービスを提供する企業として、消費者からの信頼性向上にも寄与し、競争上の優位性を築く一因となっている可能性がある。さらに、2023年には業界大手のオーネットとの資本業務提携を発表しており 1、市場内での連携・統合の動きを継続している。

C. ミッション、ビジョン、戦略的ポジショニング

IBJは、「ご縁がある皆様」を幸せにする、というシンプルながらも包括的な経営理念を掲げている 14。同社は自らを、結婚(マリッジサービス)と人生設計(ライフデザインサービス)の分野におけるリーディングカンパニーと位置づけ、独自の強みとして「IT×ヒト」の融合を強調している 14。これは、テクノロジーを活用した効率的なマッチングシステムと、経験豊富なカウンセラーやコンシェルジュによる人間的なサポートを組み合わせることで、現代の婚活ニーズに応えようとする戦略的アプローチを示している。

さらにIBJは、自社の事業活動を通じて、日本の深刻な社会課題である少子化、未婚率の上昇、高齢化問題の解決に貢献することを目指している 14。この姿勢は、単なる営利企業としての活動を超え、社会的な意義を追求する企業としてのブランドイメージを構築しようとする意図がうかがえる。実際に、経済産業省の「ライフデザインサービス」事例として取り上げられたり 17、こども家庭庁主催のワーキンググループに登壇したり 17 といった活動は、このポジショニングが公的機関との連携にも繋がる可能性を示唆している。社会課題解決への貢献というミッションは、従業員や加盟相談所のモチベーション向上にも寄与し得るだろう。

「IT×ヒト」というポジショニングは、単なるマーケティング上の標語ではなく、IBJの事業構造そのものを表している。大規模なデジタルプラットフォーム(IBJS)を運営する一方で、直営店および加盟相談所を通じて多数のカウンセラーが介在する。このハイブリッドモデルは、ITによる規模と効率性(多くの出会いの機会創出、迅速なマッチング)と、人間による個別サポートと信頼性(パーソナルなアドバイス、成婚に向けた意思決定支援)の両立を目指すものである。これにより、完全にデジタル化されたマッチングアプリの匿名性や手軽さだけでは満たされないニーズ、あるいは完全に人手に頼る従来型相談所のリーチの限界といった、それぞれのモデルが持つ潜在的な弱点を補完し、より効果的で強靭な事業モデルを構築していると考えられる。

D. 日本の結婚相談・婚活市場における役割

IBJは、日本の結婚相談所市場において、加盟相談所の数(約4,500社)と登録会員数(2025年初頭時点で約96,000名)の両面で、業界最大手のネットワークを構築・運営している 1。その中核的な役割は、全国の加盟相談所とその会員を繋ぐ中央プラットフォームを提供することにある 1

しかし、その役割は単なるネットワーク提供に留まらない。IBJは、基幹システムである「IBJS」 1 の提供に加え、運営基準の設定、さらにはカウンセラー向けの研修や資格認定制度(例:「認定婚活カウンセラー・スペシャリスト」17)の提供を通じて、加盟する数千の独立系結婚相談所の業務品質や運営手法にも影響を与えている。これは、IBJネットワーク全体のサービス水準を一定に保ち、会員がどの加盟店を利用しても質の高いサポートを受けられる体制を目指すものであり、結果としてIBJの影響力と市場支配力を強化する構造となっている。

このプラットフォームの支配的な地位は、強力な「ネットワーク効果」を生み出している。会員数が多いほど、新たな会員(=出会いを求める人)にとって魅力的なプラットフォームとなり、より多くの人々が入会を希望する。同時に、多くの会員へのアクセスを求める結婚相談所にとっても、IBJへの加盟は事業運営上、極めて有利となる。そして、加盟相談所が増えれば、さらに多様な会員が集まり、プラットフォームの価値は一層高まる。この自己強化的なループは、新規参入を目指す競合プラットフォームにとって、同等規模のネットワークを構築することを極めて困難にし、IBJの市場リーダーとしての地位を揺るぎないものにしている。

II. 2025年 日本の婚活市場の展望

A. 市場規模、成長軌道、予測

日本の婚活関連市場は、近年顕著な成長を見せている。特にオンラインを活用した恋活・婚活マッチングサービス市場は急速に拡大しており、ある調査では2026年には市場規模が1,657億円に達すると予測されている 19。オンライン婚活サービスに限定しても、2017年の258億円から2年で約2倍の510億円に成長し、2025年には1,000億円を超える可能性があるとの予測も存在した(ただし、この予測は新型コロナウイルス感染症拡大の影響が顕在化する前のものである)22。これらの数字は、IBJが事業を展開するデジタル要素を含む広範なマッチング市場の成長ポテンシャルを示している。

世界的に見ても、「結婚カウンセリングサービス」市場は高い年間平均成長率(CAGR)で成長すると予測されており(あるレポートでは13% 23、別のレポートでは関連する「結婚と恋愛感情サービス」市場で7.1% 24)、日本市場もこのグローバルなトレンドの影響を受けていると考えられる。ストレスの多いライフスタイル、離婚率の上昇、メンタルヘルスへの関心の高まりなどが、これらのサービスへの需要を後押ししている 23

オンラインセグメントの急成長予測 19 は、デジタルプラットフォームの重要性が増していることを明確に示している。IBJもアプリやIBJSシステムといったオンライン要素を持つが、その中核的な強みは、デジタルと人的サポートを組み合わせたハイブリッドモデルにある。2025年におけるIBJにとっての課題であり機会は、純粋なアプリベースの競合サービスに対して、自社のデジタルサービスの利便性を高めつつ、人的サポートがもたらす付加価値(特に成婚という結果へのコミットメント)を維持・強化していくことにあるだろう。戦略としては、デジタル技術をリーチ拡大や運営効率化に活用しつつ、真剣に結婚を考える層に対しては、カウンセラーによるサポートの独自価値を訴求していく方向性が考えられる。

また、コロナ禍において「リモート婚活」という新しいスタイルが登場したこと 22 は、市場が外部環境の変化に迅速に適応したことを示している。オンラインでの相談やバーチャルなお見合いといった手法は、パンデミック収束後も、利用者の期待やサービス提供モデルに恒久的な影響を与えている可能性がある。これは、2025年においても、IBJおよびその加盟相談所が、オンラインとオフラインを柔軟に組み合わせたサービス提供を継続・進化させる必要があることを示唆している。IBJが持つ既存のITインフラ(IBJS)は、この変化への適応において有利に働いた可能性がある。

B. 業界を形成する主要トレンド

日本の婚活市場の背景には、いくつかの重要な社会的トレンドが存在する。生涯未婚率が上昇し続ける一方で、未婚男女の約9割が「いずれ結婚したい」と考えているというデータがあり 14、結婚願望と現実との間にギャップが存在することが、婚活サービスへの根本的な需要を生み出している。少子化や高齢化の進行も、社会全体として結婚・出産への関心を高める要因となっている 14。実際に、結婚したカップルのうち、何らかの婚活サービスを通じて出会った割合は、過去20年で16.5%(約6組に1組)に達し、今後も増加が見込まれる 14

出会いの手段としては、マッチングアプリ、婚活パーティー、伝統的な結婚相談所など、多様化が進んでいる 14。特にオンラインカウンセリングやデジタルプラットフォームの利用は増加傾向にある 23。また、単なる出会いの場の提供だけでなく、メンタルウェルネスの重視や、個々のニーズに合わせたカスタマイズされたサービスの提供、感情的なサポートや関係構築スキルの向上といった側面への関心も高まっている 24

結婚願望は高いにも関わらず未婚率が上昇しているという状況 14 は、職場結婚やお見合いといった従来の出会いのチャネルが、現代社会において機能しにくくなっていることを示唆している。晩婚化、都市部への人口集中、働き方の変化などが、自然な形でのパートナーとの出会いを減少させている可能性がある。この構造的な変化が、カジュアルなアプリから本格的な結婚相談所まで、あらゆる形態の婚活サービス市場全体の成長を促進していると言える。

「カスタマイズされたサービス」や「メンタルウェルネス」への注目の高まり 24 は、IBJのカウンセラー(仲人)を基盤としたモデルにとって追い風となる可能性がある。アルゴリズム主体のマッチングアプリでは提供が難しい、個別の状況に応じたアドバイス、活動中の精神的なサポート(「婚活ブルー」21 と呼ばれるような心理的負担への対応)、そして成婚に向けた具体的な戦略立案といった付加価値を提供できるからである。これは、単なる出会いの数ではなく、結婚という成果を重視するプレミアム市場セグメントにおいて、IBJの競争優位性を高める要因となり得る。この人間的な介在価値が、比較的高価なサービス料金を正当化し、真剣度の高いユーザー層を引きつけると考えられる。

C. 競争環境とIBJの相対的な位置づけ

IBJは、結婚相談所連盟(ネットワーク)として、加盟店数・会員数ともに業界最大手であり、リーディングカンパニーと認識されている 1。しかし、競争環境は多様である。競合としては、IBJと同様の連盟事業を行う事業者(例:日本ブライダル連盟(BIU)19)、IBJが資本業務提携を結んでいるオーネット 1 のような大手直営結婚相談所、多数の地域密着型・中小規模の相談所、そしてTinder 24 や国内の各種サービス 14 に代表されるオンラインマッチングアプリなどが存在する。

IBJは、ツヴァイやサンマリエといった有力な競合企業を買収し 1、オーネットとの提携 1、さらに2025年3月には同業のタメニー(証券コード:6181)の株式を取得する 7 など、市場統合に向けた動きを活発化させている。これは、競争環境を自社に有利な形に再編しようとする明確な戦略の表れである。

IBJの戦略は、二つの側面から捉えることができる。一つは、伝統的な結婚相談所ネットワークのインフラを支配すること。もう一つは、主要な直営相談所ブランドを自社グループ傘下に収めることである。これにより、直接的な競合を減らしつつ、買収した企業の会員基盤やブランド力を取り込み、グループ全体の市場シェア(プラットフォーム経由の間接的なシェアと直営店経由の直接的なシェア)を拡大している。タメニーへの出資 7 は、この市場統合戦略が2025年に入っても継続していることを示している。この戦略は、規模の経済性を高め、交渉力を強化し、IBJをさらに支配的な存在へと押し上げる効果を持つ。

一方で、結婚相談所市場における支配的な地位を確立しているとはいえ、IBJは、特に若年層や結婚への意識がまだ高くない層をターゲットとする、低価格で手軽なマッチングアプリからの間接的な競争圧力に常に晒されている。IBJの提供する、比較的高価格で手厚いサポートを伴うサービスモデルは、その価格に見合う明確な成果(すなわち高い成婚率)を継続的に示し、真剣に結婚を望むターゲット層に対してその価値を訴求し続ける必要がある。競争相手は他の結婚相談所だけでなく、出会いの手段を提供するあらゆるサービスであると認識する必要があるだろう。

III. IBJの全国サービスポートフォリオ

A. 主要事業セグメント

株式会社IBJの事業は、主に4つのセグメントで構成されている 13

  1. 加盟店事業: 全国の独立系結婚相談所の開業支援や、これら加盟相談所に対するプラットフォーム(IBJS)の提供、日本結婚相談所連盟の運営を行う。
  2. 直営店事業: 「IBJメンバーズ」、「サンマリエ」、「ZWEI(ツヴァイ)」といった自社ブランドの結婚相談所を直接運営する。
  3. マッチング事業: 婚活パーティーや街コンといったイベントの企画・運営(ブランド名:「IBJ Matching」)、および婚活アプリ(「ブライダルネット」、「youbride」など)の運営を行う。
  4. ライフデザイン事業: 結婚後の生活に関連するサービス、例えばウェディング会場紹介、保険代理店事業、不動産仲介・住宅ローン相談、フォトスタジオ運営などをグループ会社を通じて展開する。

この多角的な事業構造により、IBJは婚活から結婚後のライフステージに至るまでの様々な顧客ニーズに対応し、収益源を多様化している。異なるサービス(相談所、イベント、アプリ)を好む顧客層を取り込むとともに、各セグメント間での相乗効果(例:イベント参加者を相談所会員へ誘導するなど)を追求することが可能となっている。これにより、単一事業に依存するリスクを低減し、より安定した事業基盤を構築している。

B. IBJプラットフォーム(IBJS)とネットワーク効果

IBJの事業基盤の中核を成すのが、オンラインプラットフォーム「IBJお見合いシステム(IBJS)」である 1。このシステムは、全国約4,500社の加盟相談所と、2025年初頭時点で約96,000名の会員を結びつけ、会員管理やお見合いのセッティングを効率的に行うことを可能にしている 13。IBJは、このプラットフォームへの新規加盟を希望する法人・個人に対し、開業支援も提供している 13

IBJSプラットフォームは、前述したネットワーク効果(I.D項参照)を駆動するエンジンである。約96,000名という巨大な会員基盤と、月間約79,000件(2025年3月時点 27)に達する活発なお見合い活動は、独立系の結婚相談所にとって、自社会員に十分な出会いの機会を提供するために不可欠なインフラとなっている。そのため、IBJネットワークへの加盟は非常に魅力的であり、これがIBJの市場における中心的な役割と、プラットフォーム利用料からの収益を支えている。この規模そのものが、競合他社に対する参入障壁となっている。

C. 直営結婚相談所(IBJメンバーズ、Zwei、サンマリエ)

IBJはプラットフォーム事業に加え、自社ブランドによる直営結婚相談所も展開している。主要なブランドとしては以下の3つが挙げられる 13

  • IBJメンバーズ: 主要都市圏を中心に展開し、年収などの入会資格を厳格に設けることで、質の高い会員層に特化したプレミアムサービスを提供 13
  • ZWEI(ツヴァイ): 1984年創業、全国に50店舗以上のネットワークを持つ大手相談所。幅広い地域をカバーし、マリッジコンサルタントによるサポートを提供 13
  • サンマリエ: 長年の実績を持つ老舗相談所。プロの仲人による専任担当制の手厚いサポートを特徴とする 13

これらの複数の直営ブランドを保有することで、IBJはサービスレベルや価格帯、サポート体制に対する顧客の多様なニーズに応え、市場全体を広くカバーすることが可能となっている。IBJメンバーズは高所得者層など特定のセグメントをターゲットとし、ツヴァイは全国的な展開力、サンマリエは伝統的な手厚いサポートをそれぞれ訴求することで、異なる顧客層を獲得している。これにより、ブランド間のカニバリゼーション(共食い)を避けつつ、直営事業全体の収益と市場シェアを最大化していると考えられる。

D. イベントサービス(IBJ Matching / 旧PARTY☆PARTY)

IBJは、「IBJ Matching」というブランド名(2024年10月にPARTY☆PARTYから名称変更 17)の下で、婚活パーティーや街コンなどのマッチングイベントを全国で企画・開催している 13。月間の参加者数は約50,000名に上るとされ(時期不明記 25)、個室での1対1トーク形式など、多様な形式のイベントを提供している 18。最近では、松竹芸能のお笑い芸人とのコラボレーション企画 20、愛知県のテーマパーク「ラグナシア」での大規模イベント 20、IBJ25周年記念の無料イベント 17 など、話題性のある企画も積極的に実施している。

これらのイベントは、結婚相談所への入会に比べて参加のハードルが低いため、IBJのサービスに初めて触れる潜在顧客層への重要なアプローチ手段となっている。イベントは、それ自体が収益源であると同時に、より本格的な婚活を検討している参加者を、IBJの結婚相談所サービスへと誘導するためのリード(見込み客)獲得の場としても機能している 13。多様なイベントの開催は、IBJブランドの認知度向上にも大きく貢献している。

2024年10月の「PARTY☆PARTY」から「IBJ Matching」へのブランド名変更 17 は、イベントサービスとIBJ本体ブランドとの連携を強化し、グループ全体としての一体感を高める狙いがあると考えられる。これにより、IBJブランドが持つ信頼性や認知度をイベント事業にも活かし、イベントから相談所への移行率を高めるなど、クロスセル効果の向上を図っている可能性がある。

E. オンライン/アプリベースのサービス(ブライダルネット、Youbride)

IBJは、結婚相談所やイベント事業に加え、純粋なオンラインのマッチングサービス(婚活アプリ)も提供している。主要なサービスとしては、専任カウンセラーによるサポートを特徴とする「ブライダルネット」 13 や、株式会社Diverseからの事業譲受を通じて取得した「youbride」 13 がある。ブライダルネットの利用者は、96%が結婚を真剣に見据えて活動しているとの調査結果も報告されており 20、他のカジュアルなデーティングアプリとの差別化を図っている。

IBJの中核事業は手厚いサポートを伴う相談所モデルであるが、これらのアプリサービスを維持することで、デジタルファーストなアプローチを好むユーザー層や、まだ本格的な相談所利用には至らない段階のユーザー層も取り込むことができる。特にブライダルネットにカウンセラーサポートを組み込んでいる点は、アルゴリズムのみに依存する多くの競合アプリとは一線を画し、IBJらしい「IT×ヒト」の価値観を反映しようとする試みと言える。これらのアプリは、より高価格帯の相談所サービスへの入口としての役割も担っている可能性がある。

F. ライフデザインおよび付随サービス

近年、IBJは婚活支援に留まらず、成婚後のカップルの人生設計をサポートする「ライフデザイン事業」へと領域を拡大している 13。具体的には、結婚式場探しや準備をサポートする「ウエディングnavi」 18、保険(生命保険・資産運用)の提案を行う「IBJライフデザインサポート」 1、新居探しや住宅ローンに関する相談に応じる不動産事業(株式会社IBJファイナンシャルアドバイザリー)1 など、多岐にわたる。プロフィール写真などで実績のあるフォトスタジオ「セルフィット」もグループ傘下にある 18。経済産業省が「ライフデザインサービス」に注目し、IBJの事例を掲載したこと 17 も、この分野の重要性が高まっていることを示している。

このライフデザイン事業への展開は、顧客との関係性を長期的なものへと転換し、顧客生涯価値(LTV)を最大化しようとする戦略的な動きである。婚活プロセスを通じて構築された顧客との信頼関係を基盤として、結婚、住宅購入、保険加入といったライフイベントに関連するサービスを提供することで、新たな収益源を確保し、事業ポートフォリオの安定化を図っている。

さらに、韓国語教室や関連メディアを運営する「K Village」 1 など、一見すると婚活やライフデザインとは直接的な関連性が薄い事業もグループ傘下に収めている。これは、収益性の高い事業を機会主義的に取得する純粋な事業多角化戦略、あるいは特定のライフスタイルや趣味を持つ層(それが婚活市場の特定のセグメントと相関する可能性がある)へのアプローチを意図したものかもしれない。この点はさらなる分析が必要だが、IBJが結婚関連サービスに留まらない、より広範な企業成長を目指していることを示唆している。

表1:IBJ サービスポートフォリオ概要

事業セグメントサービスタイプ主要ブランド/サービス名概要・ターゲット
加盟店事業プラットフォーム提供、開業支援IBJS(IBJお見合いシステム)、日本結婚相談所連盟全国の独立系結婚相談所向けシステム提供、ネットワーク運営、開業サポート
直営店事業結婚相談所運営IBJメンバーズ主要都市部、高スペック層向けプレミアムサービス
結婚相談所運営ZWEI(ツヴァイ)全国展開、幅広い層向け、マリッジコンサルタントによるサポート
結婚相談所運営サンマリエ老舗、プロ仲人による専任担当制の手厚いサポート
マッチング事業イベント企画・運営IBJ Matching(旧 PARTY☆PARTY)婚活パーティー、街コンなど多様な形式の出会いイベント
婚活アプリ運営ブライダルネットカウンセラーサポート付き婚活アプリ、真剣な結婚希望者向け
婚活アプリ運営youbride30代・40代中心のマッチングサービス
ライフデザイン事業ウェディング関連ウエディングnavi結婚式場紹介、指輪選び、プロポーズ・結納等のサポート
保険・金融IBJライフデザインサポート生命保険、資産運用、ライフプランニング相談
不動産・住宅ローンIBJファイナンシャルアドバイザリー新居探し、住宅ローン相談・サポート
フォトスタジオセルフィットプロフィール写真、記念写真等の撮影
その他(趣味・コミュニティ等)K Village韓国語教室、韓国関連メディア運営など

出典: 1

IV. IBJ パフォーマンス分析:主要指標とデータ(2024年後半~2025年初頭)

A. 全国会員基盤

IBJネットワーク全体の登録会員数は、2025年3月/4月時点で96,449名に達している 26。これはIBJプラットフォームを通じてアクセス可能な総会員数を示す。このうち、IBJの直営プレミアムサービスであるIBJメンバーズの会員数は6,193名と報告されている 28。この巨大な会員基盤はIBJの最も重要な資産であり、後述するネットワーク効果の源泉となっている。

会員基盤は静的なものではなく、常に新しい会員が流入している。月間の新規入会者数は、平均で約4,000名超 29 から5,700名(2025年2月実績 30)、直近の2025年3月には6,040名 27 と報告されており、活発な会員獲得が継続していることを示している。このダイナミズムは、会員にとって常に出会いの可能性が更新されることを意味し、プラットフォームの魅力を維持する上で不可欠である。

会員の属性を見ると、2025年1月1日時点のデータでは、女性会員の半数以上が20代から30代前半である 26。男性については、IBJメンバーズのデータではあるが、87%が年収500万円以上とされている 28。また、2023年の成婚者のデータでは、88.1%が初婚であった 31。これらの断片的な情報からは、IBJネットワークの会員層が、比較的若い女性と経済的に安定した男性を中心とし、主に初婚を希望する真剣な交際・結婚相手を探している層に偏っている可能性が示唆される。

この約96,000名という会員基盤の規模と、月間約6,000名という高い新規流入数は、IBJの競争優位性の核である。これにより、会員は豊富な選択肢の中から相手を探すことができ、加盟相談所にとっては魅力的な事業環境が提供される。この規模を他の競合が模倣することは容易ではなく、強力な参入障壁として機能している。ただし、示唆される会員属性の偏りは、IBJのサービスが特定の社会経済的基準を満たす、比較的伝統的な結婚観を持つ層に最も適している一方で、それ以外の層(例えば、より高齢の層、低所得層、非伝統的な関係を求める層など)にとっては、魅力が限定的である可能性も示している。

B. マッチング(お見合い)活動レベル

IBJネットワーク内で成立する月間のお見合い件数は、非常に高い水準で推移している。2024年10月には過去最高の7万件を突破し 17、その後も増加傾向を見せ、2025年3月には79,304件に達した 27。これは、会員が積極的に活動し、システムや加盟相談所のサポートを通じて、多数の出会いが実際に生まれていることを示している。この活発なマッチング活動は、大規模な会員基盤と、お見合いを奨励するIBJのシステム・運営方針(「成婚主義」)の直接的な結果であり、ネットワーク全体の活力を示す重要な指標である。

C. 結婚成功(成婚)率と実績数

IBJが最も重視する成果指標は「成婚(せいこん)」、すなわち会員同士が婚約または結婚の意思を固めて退会することである。月間の成婚者数は、2025年3月単月で1,560名と報告されている 27

年間ベースで見ると、IBJは2024年に過去最多となる16,398組の成婚カップルを生み出したと発表している 20。過去のデータについては、情報源によって若干の差異が見られる(例:2023年については12,527組 32、13,516名 32、15,374名 31、2024年についても15,374名 30 という数字もある)が、最新の公式発表である16,398組(2024年)を採用するのが妥当であろう。いずれにせよ、年間1万組をはるかに超える成婚実績は、IBJのサービスが結婚という具体的な成果に結びついていることを強く示している。

特筆すべきは、成婚に至るまでの期間の短さである。2023年の成婚者のデータによると、活動開始から成婚退会までの在籍期間の中央値は約9ヶ月、お見合い後の交際期間の中央値は約4ヶ月であった 31。これは、一般的な恋愛における平均交際期間(ある資料では4.3年と指摘 32)と比較して、著しく短い。IBJメンバーズでは、入会後3ヶ月以内に8割以上が交際に至り、半年から1年程度で成婚退会するケースが多いとされている 28。一部では「成婚3ヶ月ルール」の存在も示唆されており 29、効率的な活動が奨励されていることがうかがえる。

この高い成婚実績と効率性は、IBJが他の多くのマッチングアプリと比較してプレミアムな価格設定を正当化する根拠となっている。「成婚主義」 17 を掲げ、具体的な成果にコミットする姿勢が、同社のブランドアイデンティティの中核を成している。ただし、この短期間での成婚達成という特徴は、結婚に対して明確な意思を持ち、効率的かつ構造化されたプロセスを求めるユーザーには魅力的である一方、より時間をかけた自然な関係構築を望むユーザーにとっては、プレッシャーと感じられる可能性もある。これは、IBJがターゲットとするユーザー層と、そのサービス提供プロセスの特性を反映していると言える。

D. 推定市場シェアと国内婚姻への貢献

IBJは、自社の成婚実績が日本の総婚姻数に与える影響についても言及している。2023年には、IBJグループ全体での成婚数12,527組は、同年の日本の総婚姻数489,281組に対して約2.6%に相当すると試算している 32

さらにIBJは、この貢献率を将来的に引き上げるという野心的な目標を掲げている。過去には日本の婚姻数の3%(年間18,000組) 25、そして直近では2027年までに5%(年間25,000組)をIBJグループから創出するという目標が示されている 15

単一の企業グループが日本の総婚姻数の約2.6%を占めるという現状 32 は、IBJの市場における特異な規模と影響力を示している。もし目標通り5% 15 を達成すれば、日本の20組に1組のカップルがIBJのサービスを通じて誕生することになり、同社は日本の人口動態に対して無視できない影響力を持つ存在となる。これは、少子化対策を進める政府や地方自治体との連携を深める機会をもたらす可能性がある一方で、社会インフラとしての一翼を担うことに対する責任や、公的な監視の目が強まる可能性も示唆している。

表2:IBJ 主要業績評価指標(KPI)推移

期間総会員数(IBJネットワーク)月間新規入会者数月間お見合い件数月間成婚者数/組数年間成婚組数国内婚姻数シェア(推定)出典例
2023年12,527組約2.6%32
2023年15,374名/組31
2024年10月70,000件超17
2024年12月頃約94,000名約72,000件19
2024年15,374組30
2024年16,398組20
2025年1月96,449名26
2025年2月末約5,700名30
2025年3月96,449名6,040名79,304件1,560名27

注: データは報告時期や集計基準により若干の差異が存在する可能性がある。年間成婚組数は最新のプレスリリース値を太字で示している。会員数は2025年初頭の値。

V. 最近の動向と戦略的取り組み(2025年に向けて)

A. 主要ニュース、プレスリリース、IR発表(2024年後半~2025年初頭)

IBJは、月次のKPI報告 6 を含むIR活動を活発に行っている。2024年後半から2025年初頭にかけての主な発表としては、2024年の過去最高成婚組数の達成 20、タメニー株式会社の株式取得 7、新たなカウンセラー資格認定者の誕生 20、他社との協業(医療福祉人材サービスのトライト 20、化粧品・健康食品のファンケル 20、旅行会社の日本旅行 17)、大規模イベントの開催(お笑いライブ連携、テーマパーク連携、周年記念無料イベントなど 17)、イベントサービスブランド「PARTY☆PARTY」の「IBJ Matching」への変更 17、そしてタレントの森香澄氏を起用した新広告ビジュアルの公開 1 などが挙げられる。また、こども家庭庁や経済産業省といった政府機関との連携や対話も報告されている 17

これらの活発な動きは、IBJが2025年に向けて、マーケティング強化、戦略的パートナーシップ構築、サービス改善、そしてステークホルダーとの関係構築に積極的に取り組んでいることを示している。特に、過去最高の業績達成、ブランドイメージ刷新、著名人の起用、そして戦略的な提携といった一連の発表は、市場リーダーとしての地位を固め、前述の野心的な成長目標(日本の婚姻数の5%達成 15)に向けた勢いを加速させようとする、同社の強い意志の表れと解釈できる。

B. 合併、買収、提携

近年のIBJの成長戦略において、M&Aやアライアンスは重要な役割を担ってきた。2023年のオーネットとの資本業務提携 1 に続き、2025年3月には同業のタメニーの株式を取得 7 するなど、市場統合への動きを継続している。これらは、競争環境を再編し、規模の経済性を追求する戦略の一環である。

加えて、異業種企業との協業も積極的に進めている。医療福祉従事者向け人材サービスを展開するトライトとの協業 20 は、特定の職業層へのアプローチ強化を、日本旅行との協業 17 は、地方での婚活イベント開催などを通じた地域活性化への貢献と、地方における出会いの機会創出を意図していると考えられる。ファンケルグループとのコラボレーション 20 では、イベント参加者へのプレゼント提供などを通じて、顧客体験価値の向上を図っている。これらのパートナーシップは、IBJが伝統的な都市部の顧客層だけでなく、より多様なコミュニティや地域、特定のニーズを持つ層へとリーチを拡大しようとしていることを示唆しており、全国規模での成長目標達成に向けた多角的なアプローチの一環と見ることができる。

C. サービス革新とマーケティングキャンペーン

IBJは、サービス内容の改善とマーケティング活動にも継続的に注力している。タレント森香澄氏をアンバサダーに起用し、「IBJ婚」をテーマとしたキャンペーンを展開 1 していることは、ブランドイメージを刷新し、特に若年層への訴求力を高め、結婚相談所利用のイメージをより現代的でポジティブなものへと転換しようとする、大規模な投資と言える。これは、ニッチな市場向けマーケティングから、より広範な層に向けたブランド構築へとシフトしていることを示唆している。

イベントサービスのブランド名を「IBJ Matching」に統一したこと 17 は、グループ内サービスの連携強化とブランド認知向上を目的とした動きである。また、お笑いと婚活の融合 20 やテーマパークでの開催 20 など、ユニークなイベント企画は、メディア露出の増加や新規顧客層の獲得に寄与している。

さらに、自社で実施した婚活男女への意識調査の結果を積極的にプレスリリースで発信している 20。例えば、「婚活アプリ利用を友人に話せるか」「結婚相手のファッションへの意識」「バレンタインデーの影響」といったテーマの調査結果は、メディアの関心を引きつけ、IBJが婚活市場の動向やユーザー心理を深く理解している企業であるとの印象を与える。これは、一種のソートリーダーシップ戦略であり、間接的に自社サービスの必要性(例:ファッションアドバイスの提供など)を訴求する効果も狙っている可能性がある。

D. カウンセラー育成と品質重視

IBJの「IT×ヒト」モデルにおいて、「ヒト」の要素、すなわちカウンセラー(仲人)の役割は極めて重要である 13。同社はこの点を強く認識しており、カウンセラーの質向上に継続的に投資している。IBJメンバーズでは、カウンセラーに対して100時間もの研修を実施しているとされ 28、さらに一般社団法人日本ライフデザインカウンセラー協会(JLCA)認定の講座を通じて、「認定婚活カウンセラー・スペシャリスト」といった資格制度を設け、その取得を推進している(最近205名が認定されたとの報告あり 17)。また、成功している現役相談所オーナーを講師に招いたセミナーを開催するなど 20、実践的なスキルアップの機会も提供している。

このようなカウンセラーの育成と資格認定への注力は、IBJが提供する高付加価値サービスの品質と一貫性を、直営店のみならず、全国約4,500社に及ぶ広大な加盟相談所ネットワーク全体で維持・向上させるために不可欠な取り組みである。この人的資本への投資こそが、アルゴリズム主体のデジタルプラットフォームとの差別化を図り、「成婚」という具体的な成果を提供するというIBJのブランドプロミスを実現するための鍵となっている。

VI. 全国的な評判とユーザー認識

A. 市場リーダーシップ、成功率、メディア露出に基づく分析

IBJは、自社が業界最大手のネットワーク、最多の会員数、そして高い成婚実績を持つリーダー企業であることを、積極的に広報・宣伝活動で強調している 1。プレスリリース配信 5 やメディア実績の公開 5 を通じて、メディア露出も積極的に獲得しようとしている。

これらの活動の結果、IBJの評判は、特に結婚相談所を通じて真剣に結婚相手を探している層においては、非常に高いものと推察される。市場におけるリーダーとしての地位と、公表されている高い成婚実績は、このターゲット層に対して、信頼性と有効性の高いサービスであるとの認識を与えている可能性が高い。成功体験がさらなる利用者を呼び込み、それがまた成功実績につながるという、好循環が生まれていると考えられる。

B. ユーザー調査からの洞察

IBJは、時折、自社サービス利用者や婚活中の男女を対象とした意識調査の結果を公表している 20。例えば、ブライダルネット利用者の96%が結婚を目的としていること、婚活アプリの利用について約9割が友人に話せると回答したこと、男女間でのファッションへの意識のギャップ、バレンタインデーが関係進展に与える影響が限定的であることなどが報告されている。

これらの調査結果の公表は、複数の目的を果たしている。第一に、メディア向けの話題提供となり、企業名の露出を高める。第二に、市場のトレンドやユーザーの悩み・考え方を把握している企業であるというイメージを醸成する。第三に、調査結果を利用して、自社サービスの必要性(例:ファッションに関する男女間の意識ギャップを埋めるためのアドバイス提供など)を間接的に示唆し、サービスの利用を促進する可能性がある。これにより、IBJは婚活分野における専門家・情報提供者としての地位を確立しようとしている。

C. 潜在的な課題や批判(推察)

公開されている情報からは直接的な批判は見出しにくいものの、IBJのビジネスモデルや市場での位置づけから、いくつかの潜在的な課題や批判点が推察される。

  • 費用: 一般的に、結婚相談所のサービスはマッチングアプリと比較して高額である。IBJのサービス、特にIBJメンバーズのようなプレミアムプランは、一定の経済力がなければ利用が難しい可能性がある。
  • プレッシャー: 成婚までの期間の短さ 29 や成果主義 17 を強調する文化は、一部の利用者にとっては過度なプレッシャーとなる可能性がある。
  • 排他性: IBJメンバーズにおける年収基準 28 のような入会資格は、特定の層を優遇する一方で、基準を満たさない層を排除することになり、サービスの利用機会の不平等感を生む可能性がある。
  • 競争: 低価格で手軽なマッチングアプリ 21 との競争は、特に若年層や婚活初期段階のユーザー獲得において、常に存在する課題である。
  • 品質管理: 全国約4,500社 18 という広大な加盟相談所ネットワーク全体で、カウンセリングやサポートの質を一貫して高く維持することは、継続的な努力と厳格な管理体制を必要とする、運営上の大きな挑戦である。

バランスの取れた評価のためには、これらの潜在的な課題も考慮に入れる必要がある。IBJの評判はターゲット層においては高いものの、それ以外の層からは「高価」「形式的すぎる」といった異なる見方をされている可能性もある。特に、フランチャイズに近い形態で運営される加盟店ネットワークにおけるサービス品質のばらつきは、企業全体の評判に対するリスク要因となり得る。

VII. IBJ 全国展望 2025年:統合と予測

A. 2025年以降の目標とターゲット

IBJが公に掲げる最も重要な目標は、2027年までに日本の年間婚姻届出組数の5%に相当する、年間25,000組の成婚カップルをIBJグループから創出することである 15。この長期目標達成に向け、2025年は重要な中間年となる。短期的な目標としては、2024年の過去最高実績 20 を基盤に、会員数、お見合い件数、そして成婚組数の継続的な増加が必須となるだろう。年間18,000組(婚姻数の3%相当 25)が一つのマイルストーンとなる可能性がある。また、カウンセラーの質向上への継続的な投資 17 や、ライフデザインサービスのさらなる拡充 13 も、引き続き重点戦略となることが予想される。

2027年の目標達成には、2024年の実績(16,398組)から大幅な成長率(3年間で約50%増)が必要となる。これは、2025年において、新規会員獲得の加速、会員あたりの成婚率向上(マッチング精度の改善や成婚への後押しの強化)、そしてタメニーへの出資 7 のような市場統合(M&A)を通じた規模拡大など、あらゆる手段を講じて成長を加速させる必要があることを示唆している。2025年の実績は、この野心的な目標達成に向けた進捗を測る上で、極めて重要となるだろう。

B. 強み、弱み、機会、脅威(SWOT分析要素)

IBJの2025年における戦略的ポジションを評価するために、SWOT分析の要素を整理すると以下のようになる。

  • 強み (Strengths):
  • 圧倒的な市場シェアと強力なネットワーク効果 1
  • 大規模かつ成長中の会員基盤 26
  • 高い成婚実績と効率性に関する実証された記録 20
  • 多角化された事業モデル(「IT×ヒト」、複数ブランド、ライフデザイン事業)13
  • 強固な財務基盤(東証プライム上場)1
  • 弱み (Weaknesses):
  • マッチングアプリと比較した場合の相対的な高コスト(推察)
  • 広大な加盟店ネットワークにおけるサービス品質維持の難しさ(推察)
  • 特定の層には適合しにくい可能性のあるサービスモデル(推察)
  • 機会 (Opportunities):
  • 婚活サービスへの需要拡大と社会的受容性の向上 14
  • さらなる市場統合(M&A)の可能性 1
  • ライフデザインサービスの拡大による収益源多様化 17
  • 保有する膨大なデータを活用したマッチング精度向上の可能性
  • 政府や地方自治体との連携強化の可能性 17
  • 脅威 (Threats):
  • 低価格なマッチングアプリとの競争激化 21
  • 結婚に対する価値観の変化や非婚化・晩婚化の進行
  • 景気後退による消費者の可処分所得減少の影響
  • 広範なネットワーク内での不祥事等によるレピュテーションリスク

IBJの最大の強みは、その規模と「成婚」という具体的な成果へのコミットメントであり、これにより真剣な婚活市場において防御可能なニッチを確立している。最大の機会は、この地位を活用して市場統合をさらに進め、収益性の高いライフデザインサービスを拡大することにある。一方で、主な脅威は、進化し続けるデジタル競争と、結婚に関する社会的な価値観の変化である。したがって、IBJの戦略は、中核となるニッチ市場を防衛しつつ、より広範な市場の変化に適応していくバランスが求められる。

C. 2025年の予測される業績と市場ポジション

2024年の記録的な成婚実績 20 や、2025年初頭における好調なKPI 7 を踏まえると、IBJは2025年も会員数、お見合い件数、成婚組数において継続的な成長を遂げる可能性が高い。年間成婚組数は、過去に目標として言及された18,000組(婚姻数の3%相当 25)に近づく、あるいはそれを超える水準に達することも考えられる。結婚相談所ネットワーク市場におけるリーダーとしての地位は、強力なネットワーク効果により、揺るぎないものと予測される。ライフデザイン事業も、戦略的な注力分野として成長が見込まれる。

全体的な成長が見込まれる一方で、その成長率、特に2027年の5%目標 15 に向けた進捗度が、2025年の重要な評価ポイントとなる。成功は、近年の買収や提携(オーネット、タメニー等)の効果的な統合、ライフデザインサービスの顧客への浸透、そして事業拡大に伴うサービス品質の維持にかかっている。低価格マッチングアプリとの競争は、引き続き市場の下位セグメントにおいてプレッシャーとなるだろう。全体としてはポジティブな見通しであるが、戦略実行上のリスクは常に存在する。

D. IBJの軌道に関する結論的分析

株式会社IBJは、2025年を迎えるにあたり、日本の結婚相談所ネットワーク市場における明確なリーダーとしての地位を確立している。その強みは、圧倒的な規模、テクノロジー(IT)と人的サポート(ヒト)の融合、そして「成婚」という具体的な成果への強いコミットメントにある。市場統合、ライフデザイン事業への多角化、そして日本の婚姻数への貢献という野心的な成長目標を掲げる戦略は、IBJを単なる業界リーダーとしてだけでなく、日本の社会構造にも影響を与えうる重要な存在へと押し上げている。

婚活サービスへの需要拡大という追い風を受け、IBJの成長軌道は基本的にポジティブであると評価できる。同社は、人々の繋がりや関係構築への根源的なニーズに応える事業を展開している。しかし、そのプレミアムなポジショニングを維持するためには、絶え間ないサービス品質の向上と、広大なネットワークの効果的な管理が不可欠である。また、デジタル化の進展や社会の価値観の変化といった外部環境への適応力も問われることになるだろう。2025年は、IBJがその野心的な目標に向けて、成長戦略をいかに効果的に実行し、市場リーダーとしての地位をさらに盤石なものにできるか、その真価が試される一年となるであろう。

引用文献

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  3. IBJ(6071) 決算 – 業績推移 – 株探(かぶたん), 4月 9, 2025にアクセス、 https://kabutan.jp/stock/finance?code=6071
  4. 投資家情報 | 株式会社IBJ, 4月 9, 2025にアクセス、 https://www.ibjapan.jp/ir
  5. IRニュース | 株式会社IBJ, 4月 9, 2025にアクセス、 https://www.ibjapan.jp/ir/news
  6. IR情報 – 6071 IBJ, 4月 9, 2025にアクセス、 https://irbank.net/6071/ir
  7. 6071 IBJ | 株式情報 – IR BANK, 4月 9, 2025にアクセス、 https://irbank.net/6071
  8. IBJ【6071】|開示情報 – 株探(かぶたん), 4月 9, 2025にアクセス、 https://kabutan.jp/stock/news?code=6071&nmode=3
  9. (株)IBJ【6071】:適時開示情報 – Yahoo!ファイナンス, 4月 9, 2025にアクセス、 https://finance.yahoo.co.jp/quote/6071.T/disclosure
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  16. 株式会社IBJ 採用情報 – HRMOS, 4月 9, 2025にアクセス、 https://hrmos.co/pages/ibj
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  28. 【会員数・成婚数No.1】IBJ直営の結婚相談所 IBJメンバーズ, 4月 9, 2025にアクセス、 https://www.loungemembers.com/
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